第92話 カプチェランカ星系会戦 その3
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る。
「敵の右側後に喰らいつけ!」
「進路変更。方位〇一三〇、仰角〇.三、主舵〇.九七」
「進路変更、集団主軸、方位一時三〇分、仰角三度。進路固定後、主舵固定一四度。速度そのまま」
「集団全艦、一斉進路変更。集団主軸、方位一時三〇分、仰角三度。自律位置確保後、主舵固定一四度。第二戦速を維持せよ!」
爺様からモンシャルマン参謀長、そして俺からファイフェル、ファイフェルがオペレーターへ。それが各部隊旗艦から各戦隊、各隊、各分隊と伝わり、円錐陣は一瞬その形を崩しながらも、右旋回を開始する。右旋回だから当然集団左翼に位置する艦は内側の艦より速度を上げて動かなければならない。集団結成当初ではバラバラになっていたかもしれない艦隊運動も、度重なる訓練と実戦によって鍛えられた部隊は何とかこなしていく。
二月二七日二一〇〇時。第四四高速機動集団は敵右翼部隊のほぼ右側面に捉えることに成功する。本来なら敵の重心点から見て四時三〇分の方角に攻撃主軸を収められるはずだったが、敵右翼部隊は距離六.二光秒まで接近した段階でこちらの動きを察知したのか、進撃速度を下げて対応しようと試みていた。
しかし察知していた時点で、何故か第八艦隊左翼に位置する第四部隊が急速前進を開始しており、その最大射程内に敵右翼部隊は収められていた。
この状況下で敵右翼部隊は判断に逡巡した。速度を上げて前進すれば前後挟撃される。速度をさらに落として右旋回して第四四高速機動集団に対峙すれば第四部隊の側面攻撃を受ける。右方向に転針し第四四高速機動集団と第四分艦隊の中間宙域を抜けて同盟軍本隊後方に躍り出れば、孤立して逆包囲追撃を受ける。急速後退すればやはり第四四高速機動集団と第四部隊が合流し、孤立戦闘を余儀なくされる。
まともな選択肢がない中でヴァルテンベルクが選択したのは、速度をさらに落とし右舷回頭し、左側面に比較的少数の第八艦隊第四部隊の攻撃を受けつつも、まずは第四四高速機動集団の攻撃を受けとめ、中央のイゼルローン駐留艦隊から増援を受けて反撃に出るという消極案だった。
「やれやれ。これは第八艦隊第四部隊には、何か奢ってやらねばなるまいて」
強行突破を考えていた爺様は右耳を掻きつつ、苦笑いを浮かべた。最初にヴァルテンベルクを引き摺り込んで袋叩きした時も、特にこちらから指示を受けるまでもなく左舷回頭して対応してくれた。今回も第四四高速機動集団の逆進撃に合わせて急速前進し援護してくれている。こちらが作戦案を喧嘩腰に叩きつけて行動しているのだから、第八艦隊司令部からは特段指示が出ているとも思えないので、これも部隊司令の独自の判断だろう。
いずれにしてもヴァルテンベルク率いる敵右翼艦隊は、二方向からの攻撃にさらされることになる。後退しながら回頭しつつ、二方向か
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