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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第92話 カプチェランカ星系会戦 その3
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長は陣形再編案を提示し、モンティージャ中佐は妨害下における索敵・通信手段の再確認と強行偵察スパルタニアンの発進許可の上申、カステル中佐は爺様にエネルギーと兵器残量の要約を提示する。俺はカステル中佐の後に、爺様へ航行計画を提出する。

「メルカッツ相手にできんかった左フックで、ようやく敵を吹き飛ばせるのう」
 俺の航行案を見て、爺様は獰猛な狼のように、にやりと不敵に笑う。
「何発でKOできると思うか?」
「残念ながら右が使い物にならないので、ボディを何度か叩く必要があるでしょう」
「ミサイルの残量は一〇斉射分じゃそうだ。大事に使わんとな」
 自席に戻っていくカステル中佐の背中を一瞥した後、小さくウィンクする。
「ジュニア、すぐに忙しくなるぞ。『同時通訳』はしっかりな」

 果たしてモンシャルマン参謀長は席に座って、眉間を両手人差し指で揉んでいるのが分かる。アスベルン星系での戦い同様の戦闘指示ポジションだ。

「ファイフェル! 指揮下各部隊旗艦に伝達。『急戦速攻。陣形このまま。目標進路一一時三〇分。第二戦速』」
「ハッ!」

 爺様達に比べればまだまだひよっこだが、アスベルン星系の時に比べてだいぶ戦場での落ち着きを手に入れたファイフェルが、少し離れたところにあるマイクを手に取り復唱する。声に緊張感と若さがあるが、原作アニメで何度も聞いた声そのまま。

 視線を僅かに右に逸らせば、従卒の定位置である右舷側ウィングに、直立不動の姿勢でブライトウェル嬢が立っている。たった八ケ月前には真っ青な顔で棒立ちだった少女は、見えない敵を探すかのように、メインスクリーンを真正面から睨みつけている。

 この戦いで同盟軍が勝利を得るか否かは、正直なところ五分と五分。第四四高速機動集団の攻撃が成功し、敵の右翼部隊と本隊の脚が止まれば、第八艦隊ならば敵中央部隊と左翼部隊の接続点を圧迫し、分断することを企図するだろう。流石にその程度の判断力はシトレにはあるはずだ。
 そして完全に分断することは戦力不足で出来ないだろうが、各個撃破の危険性をメルカッツと別動隊に悟らせることは出来る。第一〇艦隊の増援は間に合わなくても、戦局不利を悟ってカプチェランカ周辺宙域より一時的に後退することは充分に考えられる。それをひっくり返す帝国軍の新たなる増援が存在するとしたら、カプチェランカ攻略作戦失敗の責任は実戦部隊には存在しない。

 前進命令が出て動き始めてから三〇分後。先行艦艇の重力波感知で敵左翼部隊の動きが入ってくる。彼らは後退から前進に移行し、陣形を凸陣形に変更。進路を左に変えつつ、第八艦隊の左翼部隊へ向けて進撃を開始しているとのこと。第四四高速機動集団の現在の位置からは右舷二時三〇分の方角、俯角三.三度、距離一〇.二光秒、ほぼ並行して逆進撃をしている形にな
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