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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第92話 カプチェランカ星系会戦 その3
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行動しても良いということ。しかし第八七〇九哨戒隊のことだからまともに戦線離脱せず、索敵任務を継続するだろう。第四四高速機動集団のさらに左から奇襲をかけられる可能性を、事前に察知する為に。

「第三五三独立機動部隊より全部隊に緊急電! 右翼方向に新たな敵勢力出現。数およそ二〇〇〇!」
「索敵情報を戦艦バラガートより受信。第三五三位置より〇四一一時、距離七.三光秒、俯角一一.五度」

 エル=トレメンドのオペレーター達が声を上げる。緊急電なので、全ての艦にバラガートからの情報が届く。エル=トレメンドからの位置に換算すると三時〇五分、距離八.八光秒、俯角一〇.四度。ほぼ真横になる。本来なら第四四高速機動集団は一斉に右舷回頭して前進、第八艦隊の予備戦力である第五部隊一二〇〇隻と合流してこれに対処するのだが……

「第三五九独立機動部隊と第三六一独立機動部隊が、戦線から後退しています!!」
「旗艦ヘクトルより第八艦隊第五部隊に迎撃指示が出た模様です」
「味方右翼部隊で通信量増大。錯綜を起こしています」

 戦闘艦橋にいるオペレーター達の声が、司令艦橋に設置されているスピーカーではなく、直接聞こえてくる程までに大きくなっている。モンシャルマン参謀長が直ぐにモンティージャ中佐に無言の視線を送ると、中佐は返答せず自分のインカムを鷲掴みして、まるで鼻歌を歌うような軽快な声でオペレーター達に話かける。

「慌てるな。まずは新たな敵を発見した時からの、味方部隊の動きのみを観測し、シミュレーション化して司令部に報告せよ。通信や命令の報告は、当部隊宛のもの以外は報告しなくていい」

 一瞬シーンと静まり返ったエル=トレメンドの艦橋は、堰を切ったようにコンソールを叩く音のみが響き、三〇秒後には司令部の三次元投影機に、味方部隊と横槍を入れてきた敵部隊の制宙範囲が時系列で浮かび上がる。

 それを見るかぎり、第三五九と第三六一両独立機動部隊の、戦列後退からの右舷回頭行動は見事に統制されており、横槍を入れてきた敵別動隊の前にガッチリと壁を作り上げることに成功した。現時点で両部隊の数は合わせて一二〇〇隻に達してはいないが、両部隊の後方にこれまた転舵した第五部隊一二〇〇隻が並び、敵よりやや多い戦力で並行陣を形成し、別動隊の味方後背への侵入を阻止している。

 事前に第八艦隊司令部へ意見具申をしているとはいえ、その情報が彼らの手元に届いているとは時間的に考えられず、敵の出現と共に独自の判断で後退・反転回頭を判断し、間一髪とはいえ巧みに戦列を組みなおし、別動隊に逆撃の砲火を浴びせている。これだけ見ればパストーレもムーアも、六〇〇隻前後の独立部隊の指揮官としての力量は、まずもって一流と言えるだろう。

 だが局地戦における独立機動部隊指揮官として一流であっても
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