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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第92話 カプチェランカ星系会戦 その3
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きた戦術理論を元に状況を分析し、対処する為の案を導き出すことのできるエリートで構成されておる」

 それは決して悪い司令部ではない。むしろ優秀な司令部と言っていい。だが状況が自分達の学んできた理論を超える事態になった時、思考が硬直するきらいがある。集団として理屈倒れのシュターデンみたいな雰囲気は確かにあった。独断専行した(ように見えた)第四四高速機動集団司令部から俺を召喚して詰問したのがいい例だ。

「でしたら尚更、彼らのコントロールから外れるような状況になった場合に備えて、我々も対応すべきではないでしょうか?」
「それもジュニアの言う通りじゃが、こういう場合は味方右翼部隊の戦力構成を考えてから、『後の後の先』を考えるのが正解じゃな」
 爺様の言葉に、俺は頭の中で右翼部隊の戦力構成を各司令の顔と共に思い浮かべる。四つの独立部隊の集合体で、先任である第三五三独立機動部隊のドゥルーブ=シン准将が指揮を執っている。そして後退する敵に対して部隊を二分して交互躍進攻撃を行っている……
「……まさか右翼部隊が二つに部隊を割って、前方と側面の双方に対処しようと動くとお考えですか?」

 そんなことは常識的にありえない。数的にほぼ互角の、戦力的には圧倒的に格上のメルカッツ艦隊と味方右翼部隊がまともに戦えているのは、右翼部隊自身の敢闘もさることながら、メルカッツ側が長距離砲撃戦のみで対処して近接戦闘を挑んできていないことにある。
後退と合わせてそれをメルカッツの戦意不足と勘違いして追撃しているというのであれば、流石に近視眼に過ぎるが、もしそう考えているならば別動隊を『殿の横槍』と考えて、部隊を二つに割って対応しようと考えてもおかしくない。つまり爺様が考えていることは……

「……前進強襲・右旋回戦闘」
「正解じゃ」

 鼻で笑うような爺様の態度に、俺は暗澹たる気持ちにさせられた。モートンにしても、カールセンにしても、ケリム警備艦隊のエジリ大佐にしても、そして爺様にしても、同盟軍のエリートに対する反骨精神がもはや不信というレベルに達している。
 実戦経験の機微と戦術理論が現実上で対立した時、司令部がどう判断するか。理論を強く主張する参謀チームを統括し、実戦経験豊富な中級指揮官を熟練した指揮で動かすことができる優秀な戦術家であるラザール=ロボスが、宇宙艦隊司令長官になるのはある意味当然だ。なんでそれほどの男がフォークの専横を許したのか、まったく理解しがたい。
 シトレがこれからの経歴で宇宙艦隊司令長官になれるかどうかは分からないが、統合作戦本部長になれたのは爺様の評価の通りだということ。爺様がシトレ閥にいるというのは、長年の知人であり比較的マシなエリートで、人格的に優れているからなのだろう。戦術指揮官としては、爺様はそれほどシトレを評価していない
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