第二章
[8]前話
青木は本気で緑谷に何度も告白した、それで最初は嘘だ冷やかしだと思っていた彼も遂に折れてそうしてだった。
交際をすることにした、しかし。
「あの、僕こうした経験は」
「私三年前まで十五年付き合っていた彼氏がいますので」
青木は戸惑う緑谷に答えた。
「ご安心下さい」
「そうですか」
「ただ。何も経験がなくて」
そしてというのだ。
「純粋というところもです」
「いいんですか」
「はい」
こう緑谷に答えたのだった。
「私にとっては」
「そうですか」
「浮気とかされないので」
「まさか前の彼氏の方とは」
「ノーコメントです」
青木はそこから先は言わなかった。
「宜しくお願いします」
「わかりました、じゃあ僕でよかったら」
「これからもお願いします」
青木の方から言ってだった。
緑谷は彼女と交際していきやがて結婚した、彼はそこまで至って大学を卒業してそのまま八条うどんに正社員として入社した野村に言った。
「何でも奥さんが言うには」
「純情なんですか、緑谷さん」
「そうみたいだね」
「これまでどなたとも交際したことがなくて」
「デートの時に何をしたらいいかとか」
そうしたことはというのだ。
「わからなくてもね」
「副店長さん的にはですか」
「よくてむしろ真面目にね」
それでというのだ。
「そして穏やかに働いてそうした性格なら」
「いいんですね」
「奥さんはそう言ってるよ」
「そうですか」
「いや、ずっと縁がないと思っていたよ」
緑谷はまたこう言った。
「けれどね」
「それはですね」
「実は違うね、野暮ったくて恋愛経験がなくて」
「知識がなくても」
「性格と行動みたいだね」
恋愛に大事な要素はというのだ。
「どうも。それじゃあ僕はお家でね」
「副店長さんとですね」
「幸せな家庭築いていくよ」
「緑谷さんと副店長さんなら大丈夫ですね」
野村も笑顔で応えた、そうしてだった。
恋愛の経験がなく純情なおじさんだった彼はよき夫そして優しき父親になった。妻は彼がそうなったのはその性格故だといつも語った。そして自分の夫は最高の夫であり父親であるといつも言うのだった。
恋愛経験のないおじさんの結婚 完
2023・9・19
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