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俺様勇者と武闘家日記
第3部
ジパング
オロチの生け贄
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浮かべながら押し留める。そんな二人の様子に、私は胸が張り裂けそうな気持ちになった。
 私もアリアハンに行く前の日、お母さんに一度だけ泣きついたことがあった。一人で旅に出る不安に押し潰されそうになり、自分で決意したにも拘らず少しだけ泣き言を言った。
 そんな弱気な私を、お母さんは何でもないことのように励まして送り出してくれたっけ。
 そのときは家にいて私に軽口を叩きながら見送ってくれたルカも、今じゃあ家を飛び出して町を作ってるんだもんな。
――あ!
 そうだ、ルカのいる町に行けば、もしかしたらヤヨイさん一人でも暮らせるかもしれない。
 我ながらナイスアイデアだと思い、早速ユウリに提案しようとしたら、その前にユウリが口を開いた。
「ヒイラギ。今から俺はあんたに選択肢を与える」
 今まで冷え切っていた彼の目には、炎が燃え盛っている様に見えた。よく見るとそれはイロリの炎が映し出されただけであったが、それだけではない彼の内なる感情が体現されているようにも感じた。
「……?」
 ユウリの言っている意味がわからず、ポカンとするヒイラギさん。そんな彼女の目の前に立ったユウリは、人差し指を立てた。
「一つ、娘がオロチに喰われるのを黙って見届ける。二つ、このまま娘を納屋に閉じ込め、誰とも会わずに一生を終える。三つ、娘を俺たちに預け、一生離ればなれになる」
 彼の立てた指が三本で終わると思いきや、続けて四本目の指が立った。
「そして四つ、俺たちがオロチを倒してこの下らない風習に終止符を打つ。さあ、どれを選ぶ?」
 ――!!
 なんて、私は浅はかなんだ。
 ユウリは私なんかの考えよりも、遥か上の答えを導き出している。それはけして絵空事ではなく、彼が勇者だからこそ成し遂げられると思えるほどの説得力を感じられた。
 彼の考えに、私はすぐに決断した。
「あ、あの……、それって」
 動揺するヒイラギさんに、ユウリの横からナギがひょっこりと顔を出す。
「要するに、オレたちがオロチを倒してこの国を救うってことだよ!」
「そーそー、あたしたち『ユウシャ』一行は、ヤヨちゃんたちみたいな人を救うために旅をしてるからね! だよね、ミオちん?」
 シーラに話を振られ、私は迷うことなく首肯する。
「うん!! ヒイラギさんとヤヨイさん、二人とも幸せに暮らして欲しいもん! だから、私たちはお二人の望む選択に従います。さあ、どうします?」
 語気を強めて話す四人に圧倒されたのか、この家の住人である親子は戸惑いを隠せないまま顔を見合わせる。けれど私たちの言葉が嘘ではないということに気づき、次第に希望の光が瞳に宿った。
「ほ、本当に望んでいいのでしょうか……?」
「当たり前です!!」
「ふん。俺を誰だと思ってる」
「せっかくレベルアップしたんだ。たまには思い切
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