暁 〜小説投稿サイト〜
リュカ伝の外伝
心と身体を温める温泉
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この子《アミー》のトラウマになってなければ良いけど……

「君たち二人が無事で本当に良かった」
娘を寝かし私もベッドで横になっていると、私とアミーを抱き締めてティミーが優しく呟く。
こんな夫の温もりが私を幸せにしてくれる……ああ、願わくばこの幸せが永遠であります様に。







「あ、思い出した!」
「ど、如何したの!?」
幸せに浸り眠りにつこうとしていたのだが、突然重要な事を思い出した。

「あのナンパ男なんだけど……」
「あの男が如何したの?」
「名乗ったのよ……自分の名前と身分を」
「犯罪者なのに?」

「犯罪を犯すつもりは無かったんでしょ……ただのナンパだから」
「なるほど……それで何か問題でも?」
普通に考えたら奴の名前も身分も関係ない。だが……

「あの男……自分の事を『ラインハットの貴族』『子爵家のドン・ファン・ネル』って言ってたの」
「ラ、ラインハットの……そ、それは本当かい!?」
この状況でこんな嘘を吐く意味は無い。勿論ティミーも解っている。

「私は勿論知らないんだけど、ラインハットのネル子爵って……知ってる?」
「知ってるの何も……ネル子爵家はラインハット王家には重要な貴族家だ。参ったな……国際問題にならなければ良いのだけど」
流石に外務大臣をしているだけあって諸外国……特に友好国の有力者の事は知っていたわ。

如何(どう)する? 今からでも救出の為に捜索をした方が……?」
「いや〜……捜索と言っても危険な夜の雪山に村人を向かわせる訳にもいかないし、何よりもこの村の人員だけじゃ圧倒的に人手が足りない。下手には動けないよ」

「こ、困ったわね」
「う〜ん……」
ティミーは上半身を起こしこめかみに右手を当てて悩んでいる。

「明日の……朝一に……ウルフ君に相談しよう。国際問題になれば、僕等だけじゃ決定できない。彼の悪知恵に頼るしかないだろうなぁ……イヤだなぁ……」
そう言いながらティミーは再度横になる。

だが如何(どう)にも気がかりで眠れないらしく、小一時間悩んだ末に今すぐに連絡を入れる事に……
まだ日付こそ変わってないが夜中と言える時間帯にMH(マジックフォン)でコールする。
現れた宰相閣下は不機嫌その物だった。

少しだけ衣服が開けていたので恋人(彼女)のどちらかと楽しむ直前だったのかも知れない。
だがティミーが夜中にくだらない理由で連絡してくるワケはないと解っているので文句は言わずに内容を聞く。
ただMH(マジックフォン)に出た直後には舌打ちしてた。

とは言え内容を聞いた宰相閣下は即座に仕事モードに突入。
『今すぐにリュカさんに報告します!』と……
いやいやいや……これ以上大事(おおごと)にしないでよ!


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