暁 〜小説投稿サイト〜
リュカ伝の外伝
心と身体を温める温泉
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驚いて夫は駆け付けて……そして最もタイミングの悪い状態を目の当たりにしてしまった。

「貴様、何をしているか!!??」
世の中の夫(に限らず男性)からしたら当然の反応だ。
真っ裸の男がタオルを剥ぎ取り馬乗りになって襲っているのだから激怒もする。

凄い勢いで私等(どちらかというとナンパ男)に近づき、私から引き剥がそうとした……のだが、またまた落ちていた“しんかいりゅう”を踏んでしまったティミーは、勢いそのままに私の上に馬乗りしていたナンパ男を蹴り飛ばしてしまった。

格闘経験が豊富で強さも保証付きの勇者様が、突発的な踏み込みの勢いで一般人を蹴り飛ばしたのだ……それはもう凄い勢いで飛んでいくナンパ男。
内湯であれば壁や天井にぶつかるだけで終わったのだが……ここは露天風呂。

しかも蹴られ吹き飛んだ先は下り斜面。
枝木の折れる音が聞こえるが、それも遠離る。
相当山の下まで降りて(落ちて?)行ったが、夜の暗さと覆い繁樹木で姿は確認できなくなった。

「な、何があったんだね!?」
遅れて入って来たお義祖父様と温泉の管理人。
私はティミーにも含めて事の顛末を説明する。





「そ、そうか……それは大変な目に遭ったね」
加害者(ナンパ男)を一瞬も見る事の出来なかったお義祖父様は、困った様に私に気を使ってくれる。
何となくだがお義祖父様の言葉の奥には隠された感想が見えてくるわ。

きっと『流石はリュカの息子だな……やる事が過激だ』的なニュアンスのモノだろう。
だって妻に狼藉を働いた者に対してだとしても、冬山の急斜面に突き飛ばすなんて常識的ではない。
でもアレは不可抗力なのは私は解ってる。

「しかし……その男は無事だろうか?」
温泉の管理人さんがナンパ男の心配をする。
当然ではある……雪山に真っ裸で突き飛ばされたのだ。凍死の恐れがある。

「ですが……探す事も出来ないでしょう。夜中の雪山に入るのは危険ですからね。衣服を取り戻しに自力で戻ってきてもらうか……でも戻ってくるかな? 女性に暴行を加えようとした男ですからな。そのまま逃亡でしょう」

「だとすると明日の日の出から捜索するしかないでしょうな。罪人を捕まえるという意味を含めても……」
温泉の管理人さんとお義祖父様が話し合う。
流石のお義祖父様はティミーが悪くないという事を強調している。

だが取り敢えずは事態が収束に向かっていく。
私も何時(いつ)までも裸(タオルを巻いている)状態でいる訳にもいかず、アミー共々着替えてお義祖父様の家へと向かった。

こんな事があったのだ……アミーも怖がっているだろうと思ったのだが、再三に渡ってナンパ男を不幸にした“しんかいりゅう”のオモチャが気に入り、抱き締めて眠りについていた。
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