第3部
ジパング
異国の地ジパング
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が、この村の人たちを見てみると、私やシーラ位の年の若い女性が全くと言っていいほど見当たらない。声をかけてきたり、家の中にいる人のほとんどが男性か、中年以降の女性なのだ。
そんな些細なことを考えているうちに、気づけばすっかり辺りが暗くなり始めた。まだ日は沈みきってはいないものの街灯などはなく、代わりに設置型の松明が数軒灯るのみである。村全体が闇に覆われるのも時間の問題だ。
そんな中、タイミング良くお腹が鳴った。私は皆に聞こえてないかと辺りを見回しながら、お腹を押さえる。
「聞こえてたぞ」
「ひっ!!」
少し離れていたはずなのに、ユウリの耳には届いていたらしい。私は顔を赤らめながらユウリを恨みがましく見返す。
「ここって宿屋もねえのかな。さすがに今船に戻るのも面倒だよな。素泊まりでもいいんだけど」
歩き疲れたのか、ナギは船に戻るよりここで宿泊することを望んでいた。
「あたしたちを神の使いかなにかだと思ってんなら、お酒とかご馳走とかお供えに来てくれればいいのにね☆」
嘆くナギに対し、冗談か本気なのか区別のつかないことを言うシーラ。確かにそんな人が一人くらいいてもいいとは思うが……。
「あ、あの……。あなた方が噂の『神の御使い』様でしょうか?」
いつのまにか『センニン』から『神の御使い』にジョブチェンジしてしまっていることに戸惑いを覚える。いや、それよりこの女性はいったい何者なんだろう?
「俺は『勇者』だ。それよりあんた、俺たちに何か用か?」
ユウリが尋ねるが、なぜか女性は話しかけたはいいものの、なかなか次の言葉を言い出せずにいる。
私の母親と同じ年代のその女性は、何か躊躇っている様子だった。待ちきれず痺れを切らしたユウリが立ち去ろうとすると、いきなり彼女はユウリの手をつかんで引き留めた。
「す、すいません!! ユウシャ様にお願いがあります!! 一度家に来てくれませんか!?」
意を決して放った彼女の言葉は、想定外のものだった。ユウリはしばし考え込むと、彼女をひたと見つめてこう答えた。
「わかった。その代わり、俺たちは今腹が減っている。食事と寝る場所を用意してくれたら、頼みを聞いてやってもいい」
「わ、わかりました!!」
女性はすぐに了承した。半ば脅すようなそのやりとりに、私は申し訳ない気持ちで家へと向かう女性の後ろ姿を追う。
「ユウリ、いくら今夜の宿の当てがないからって、そんな安請け合いしちゃっていいの?」
私がヒソヒソ声でユウリに話しかけると、ユウリはしれっとした顔で、
「俺は頼みを『聞く』と言っただけだ。実際どうするかはこっちの自由だろ」
なんて無責任なことを言ってのけた。うーん、勇者がそんなことを言っちゃっていいのだろうか?
「さっすがユウリちゃん、相変わらずの屁理屈だね☆」
「黙れ。こ
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