第3部
ジパング
異国の地ジパング
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「ユウリさん! 南南西の島に、人が住んでそうな集落を発見しました!」
ヒックスさんの声が、船上に響き渡る。その声を聞いた途端、甲板にいたユウリと近くにいた私たちは、すぐさまヒックスさんのところに駆けつけた。
「見て下さい。きっとあれがジパングですよ」
ヒックスさんに望遠鏡を渡されたユウリは、彼が指さした先をその望遠鏡で覗いてみた。
「確かに方向も合っている。間違いなくあれがジパングだろう」
そう言ってユウリは隣にいる私に気づくと、自分で確かめてみろと言わんばかりに無言で望遠鏡を渡した。彼と同じ方向に望遠鏡を向けて覗くと、大陸よりは小さく、島と言うにはかなり大きな規模の陸地が映し出された。
「あれがジパング……!」
ルザミの島を離れてから約一か月。フィオナさんに教えられたとおりの航路を進み、ようやく私たちはジパングの島を見つけることができたのだ。
「では、早速船を近づけます。このあたりの海は潮の流れが複雑なので、一度皆さん船室にお戻りください」
ヒックスさんは近くの船員に指示を出すと、操舵室へと戻り舵を切る。そして私たちはヒックスさんの言葉に従い、船室に戻ることにした。
「やっとジパングに到着するんだね。やっと陸地に上がれる〜」
ずっと船の上だったからか、船室が並ぶ廊下で心底嬉しそうにシーラが声を上げる。
「最近体がなまってしょうがねえよ。早くジパングに着かねえかな」
ナギも伸びをしながらシーラと同じようなことを言う。かくいう私も二人も同じ気持ちだった。
そういえばずっと船に乗っているが、ユウリは大丈夫なのだろうか。元々酔いやすい体質の彼は、旅の扉に入るときや船に乗っているときなど、体調を崩すことが多い。ちらりと視線を彼に向けると、たまたま目があってしまい、ぎろりと鋭い目つきで睨まれた。
「何間抜けな顔で突っ立ってるんだ、間抜け女」
「いや、あの、ユウリは船酔いとか大丈夫なのな、って思って」
「ずっと船に乗っていれば、嫌でも慣れる」
そういうものなのかな? と完全には彼の言葉を鵜呑みに出来ないでいると、さらに彼は付け足した。
「これ以上お前に看病されるのは御免だからな。船酔いくらい自力で治せる」
「それどういう意味!?」
心配する私の心情などお構いなしに失礼なことを言い放つユウリに対して腹が立った私は、これ以上話す気も失せ、上陸の準備をするために船室へと戻ったのだった。
ヒックスさんは突然現れた大きな船に島の人が驚かないよう、あえて集落から離れた場所に船を接岸した。
人気のない海岸に降りた私たちは、すぐに集落のある方へと歩き始めた。辺りは見たこともないような木や草が生い茂っており、かつてスー族の里に初めて到着したときのことを思い起こさせる。
しばらく歩くと、やがて集落が見えて
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