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合昏
第二章

[8]前話
 昼は開き夜は閉じる様になった、人々はこのことをいぶかしんだ。
「これはどういうことだ」
「ネムノキの葉が変わったぞ」
「昼は開き夜は閉じる様になった」
「これはどういうことだ」
「訳がわからないな」
「これは舜様と奥方様のことだ」 
 だがここでだ、舜から跡を継いで天下を治め夏という王朝の祖となった禹が確かな声で人々に話した。
「そうである」
「舜様とですか」
「蛾皇様と女英様のことですか」
「あの方々は生前とても仲睦まじかったですが」
「お亡くなりになられてもですか」
「そうであられますか」
「あの方々は誓い合われていた」
 禹はこのことも話した。
「まさにな」
「この世を去っても共にいる」
「そのことをですか」
「誓い合われていたのですか」
「そうだったのですか」
「だからな」
 それ故にというのだ。
「魂は今も共にある」
「そうなのですか」
「誓い合われた通り」
「今もご一緒におられますか」
「あの方々は」
「しかし」
 ここである者が疑問に思って言った。
「何故ネムノキの葉が開いて閉じる様になったのか」
「それはそうだな」
「あの奇妙なことは何故起こったか」
「そうなったか」
「不思議だな」
「夜は夫婦共に過ごすな」
 禹はこのことについても答えた。
「そうだな」
「ああ、ではですか」
「あの方々は今も仲睦まじいので」
「夜は共に過ごされているので」
「それでなのですか」
「ネムノキの葉はそうなっている、だからな」
 それ故にとだ、禹は人々に話した。
「これからはあの木の葉を夫婦円満、相思相愛の証としよう」
「あの方々を思いながら」
「そのうえで、ですね」
「そうしていくのですね」
「そうしよう」
 こう言ってだった。
 禹は人々にネムノキを大事にさせた、そして天界では。 
 世を去り神となった舜が二人の妻達に語った。
「こうしてこれからもな」
「はい、共に」
「永遠に暮らしましょう」
「三人でな」
 こう話してだった。
 彼等は天界で笑顔で話をし合った、それは今も続いている。中国のまだ神話の時代とされる頃の話である。そして今もネムノキの葉は夜は閉じられている。


合昏   完


                  2023・5・13
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