とあるメイドの追憶
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有力貴族の名はネル子爵家。
現在家長であるネル子爵(父親)は足を悪くしていて一線を退き来場していない。
その為、子爵家の家督を継いだも同然の長男“ミザン・ファン・ネル”が代表としてヘンリー陛下に近付き挨拶をする。
その光景を遠巻きに美しき壁の花となった主役の新米母親が見詰めていた。
本来であれば女が出しゃばるべきでは無い。
ちゃんと解っているらしく、自分が主役である事を主張する事無く大人しくしていた。
ネル家の四男が近付いてくるまでは……
贔屓目に見てもネル家の四男に問題があった事は否めない。
事もあろうに懐妊パーティーの主役である女を、平然と口説き始めたのだから!
だが淑女であるのならば、社交辞令として受け取り穏便に事態を流せば良いのに……
この女は『身重の人妻をナンパするなんて良い度胸ね。アンタ自分の立場を理解しなさいよ』と叫んで、ネル家の四男の股間を蹴り上げたのだ!
股間に突起物が無い私でも、股座を蹴り上げられたなら悶絶するのに、相手は男性でそのダメージは計り知れない。
これだけでも大問題であるのに、この女は目の前で蹲る四男に右足を乗せ踏みにじると、『場所とタイミングと相手を全て間違えてるわよ! 恥を知りなさい。お〜ほほほほっ!』と高笑いをしたのだ!
ネル家は長男・次男共にラインハット家とは深い協力関係にあり、間柄に亀裂を生じさせる事は出来ない。
にもかかわらず、この女は平気でネル家の四男を足蹴にしたのだ……他の貴族が大勢居るパーティー会場で!
流石に一度退場したデール陛下も再登場して、お客様方をもてなす事で事態を収拾させた。
だが噂は広がりネル家は家名に傷が付いたであろう。
パーティーは予定より早めに終わる事となり、その日の内に新米母親も説教をされる事になったのだが……
『あの男はイヤらしく私の胸や腹に手を伸ばし、下品な言葉で口説いてきたのですよ! 殺さなかっただけでも感謝されるべきですわ!』
そう言って自身を正当化する。
両陛下やコリンズ殿下の話を聞く限り、ネル家には早急に名誉回復の機会を設ける必要があるらしい。
当然である。
どの様な機会になるのかは私には見当も付かないが、あまり長い時間をおく訳にはいかないだろう。
因みにネル家の四男……ドン・ファン・ネルも、勘当されて家を追い出されたとか……
我が国の未来を憂いつつも、この女を表舞台に出さない様にする事を望む。
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