とあるメイドの追憶
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が一国の姫君であろうに!
初戦はテーブルマナー……
王家の者として最低限の作法は心得ていて当然。
だがこの女のマナーは最悪だった。
音を立てて食べる……
他者の皿の物に手を出す……
これはまだ序の口。
食事中にベラベラ喋る。
しかもその内容が下ネタ。
一人先に食事を終えると平気で『ちょっとおしっこ』と言って席を立つ。
他にも挙げればキリが無い。
だが最悪だったのは、これらの行為が私に対しての当て付けでしか無かった事だ!
既に有力貴族方との食事会が予定されており、この女のテーブルマナーの悪さが露見される事は不可避であった。
当然これまでの私との講習会は他のメイド等を通じて噂となり、食事会に参加する貴族方には知れ渡っていたのだが……
いざ当日になると、この女は完璧なテーブルマナーで王太子妃としての好印象を見せ付けた。
噂の真相が気になっていた貴族の令嬢が、その場の会話で作法の事を聞いてくると……
『そうなんですよ。我が国……いえ、故郷のテーブルマナーと違うらしく、この国の教育係には常々叱られております。しかし染み付いてしまった作法は中々抜けず、今も教育係のメイドは怒り心頭でございましょう』
そう言って私をチラリと見やる。
いや、私にだけ視線を送るのならまだ許せるのだが、デール陛下やヘンリー陛下にまで視線を向けて“間違ってる作法を教えている”という印象を貴族方に与えたのだ。
食事会が終了した後……
王家が一堂に会してる場で私に『非常識を演じるには常識を熟知する必要があるのよ。喧嘩を売る相手を間違えましたわねぇ(大笑)』と嘲笑ってきやがった。
後日、この娘の父親が来た際に、ヘンリー陛下がこの時の事で苦情を入れる。
すると父親は……
『そりゃ王族の姫君に再度テーブルマナーを教え込もうとすれば馬鹿にされてると感じて逆襲されるよ。馬鹿なの? お前は馬鹿なのかいヘンリー君?』
とヘンリー陛下をも馬鹿にする父親!
更に小娘も『あらあら……貴女が私に敵対するから、敬愛する国王陛下が田舎の小国に馬鹿にされてますわよ』と言い放つ。
私は顔から火が噴き出しそうで俯くしか出来ない。
しかしながら小娘に感謝をした事もある。
それでも“終わってみれば感謝……かな?”くらいの感謝だが!
そう……あれは夏。
グランバニアよりも北に位置するラインハットは、年間を通しては気温が低い。
それでも夏場は暑く、風の無い日などは地獄に感じる。
貴族の中には、夏は避暑地から出てこない者も居るくらいだ。
だが故郷よりかは涼しいはずであろうに、この小娘は夏に弱い。
如何やら実家では魔法技術によって、夏は涼しく冬は暖かい環境を作り出しているらしい。
何とも腑抜けた環境だ
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