七十五 いつかの居場所
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こそ幼い頃からずっと。
だからこそ今回ようやく再不斬を頼ったナルトにむしろ、安堵すらしているのだが、それは口には出さず、ただ、隣でナルトの隣に立つ。
「──ミズキが死んだ」
ナルとイルカを遠くから見守りながら、ナルトは静かに口を開いた。
それを再不斬は無言で聞いていた。
「…俺は、愚かだ」
自ら、巻物に施してある火遁の術で焼死を望んだミズキのもとへ辿り着いた時、ナルトは未だ、意識が朦朧としていた。いくら紫苑の鈴で幾分か身体の苦痛が癒えたとは言え、熱が四十度近くあった。
だから正常な判断ができなかった…などというのは言い訳に過ぎない。
朦朧とする意識で請われたミズキの願いを叶えてしまった。たとえ、ミズキに恨まれても生かす方法をナルトは選ばねばならなかった。
それなのに──。
「おまえが愚かなら、この世は皆、馬鹿でクズばっかだろうよ」
ナルトの独白めいた言葉に、再不斬はあっさり言い放つ。
そうして少し考え込むようにしたかと思えば、思い当ったように「そうか」と頷く。
「道理で。同じ匂いがしたわけだ」
木ノ葉病院でかつて、サスケを殺そうとしたカブトを騙す為に、再不斬自身が一芝居打ったことがある。
その時に一緒に演技をした間柄であるミズキから、再不斬は野心の匂いを敏感にも嗅ぎ取っていた。
それは一時、木ノ葉の里に捕らえられ、囚われの身になった再不斬を逃がした月光ハヤテと同じ匂い。
再不斬と同じ野心家の匂いだ。
同一人物だったか、と鋭く察して、得心がいったとばかりに、再不斬は今一度頷く。
その頷きは最初のものとは違って、ミズキに対する賞賛の意も込められた頷きだった。
波風ナルとイルカのやりとりを、ナルトは瞬きをするのも惜しいように、じっと見つめている。
声もなく音もなく、静かに涙を流す波風ナルに、自来也の生存の真実を告げられないもどかしさ。
そして慰められない歯痒さ。
それ以上に、その涙を止められるのは自分の役目ではないと理解しているからこそ、ナルトは無意識に拳を握りしめる。
その様子を隣から窺っていた再不斬は、一瞬の間を置いてから、呆れたように溜息をついた。
「おまえよぉ〜…自覚ないのか」
再不斬はそこでやっと、ナルトを指摘した。
波風ナルとそっくりなその顔を。
「そんなところまで似なくてよかったのによぉ」
再不斬に言われて初めて、ナルトは己の頬をつたうモノに気づいた。
汗でも雨でもない、波風ナルが音もなく声もなく、静かに流しているモノと同じモノを、ナルトの瞳からも無意識に零れ落ちていた。
その事実にナルト自身が酷く驚いた。
「……俺にもまだ、人の心が残っていたんだな」
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