七十五 いつかの居場所
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は間違いだと遠目からでも思い知る。
静かに音もなく涙を流すその様から、幼い頃からの処世術なのだと思い至った。
泣き声をあげることすら、疎ましく思われてきたという悲しい事実が、イルカの心に重く圧し掛かる。
刻々と溶ける棒アイスから零れ落ちる雫がナルの涙と共に、地面にポタポタ、と染みをつくった。
その染みが増えるのを止めるように、零れる涙の染みをこれ以上増やさないように、急かされるようにして、イルカはナルのもとへ足を進める。
それでもナルは、大切で大事な教え子なのだ。
あの謎めいた白フードへ返答した通り。
街灯に集る虫が照明に影を落とし、弱々しい橙色の光がナルとイルカの顔をほのかに照らした。
ブランコの四方を囲む木々の向こうから、ぼんやりと此方へ届く里の街灯り。
木々の落とす影がやけに濃かった。
「なんだ。元気そうじゃねぇか」
ブランコに腰掛けるナルとイルカを、木陰に身を潜めて、ナルトは遠くから見下ろしていた。
ブランコの大樹よりずっと高い木々の枝が、ギシリ、とうねる。
ナルトの隣の枝に降り立った再不斬は、わざと唇を尖らせた。
だが荒い息遣いと肩で息をしている様子から、全力疾走してきたのは明らかだった。
それを気取られないように、軽口を叩く再不斬に、ナルトは視線をブランコ…いや、波風ナルに向けたまま、口を開いた。
「そうでもない」
身体の不調を覚え、実際に湖に沈み、全身が痙攣するほどの激痛と眩暈がするほどの引き裂かれる苦痛に耐えていたナルトは、朦朧とする意識の中で無意識に再不斬へ迎えを頼んだ。
珍しいナルトの声音に何も言わず、遠く離れたジャングルの奥地から走ってきた再不斬は、急に無茶な頼み事をしてきた彼に対しての恨み言ひとつ言わず、平然と隣へ並び立つ。
かつては神農率いる空忍がアジトにしていた王の都の砦。
其処から木ノ葉の里まではかなりの距離があり、どれほど俊足の忍びでも優に半日はかかる。
それを僅か三時間足らずで走ってきた再不斬へ、ナルトは心から謝礼を述べた。
「来てくれて助かったよ。無理を言ったな」
「いつものことじゃねぇか」
なにを今更、と鼻を鳴らした再不斬はナルトの横顔を見て、一瞬、息を呑んだ。
だがすぐに、なんでもないように振る舞う。
「むしろホッとしてるぜ。おまえも人を頼るってことを覚えたってな」
「……結構、頼ってると思うけど」
「嘘つけ」
ナルトの背負っているものは大きすぎる。
その重い重圧も使命も運命も、ナルトは片時も離そうとはしなかった。
どれだけ己自身が苛まれていようと苦しもうと、気丈に振る舞い続ける。
それ
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