第二章
[8]前話
一緒に食べているクラスメイト達もだ、晴香の弁当を見て言った。
「あんたのお弁当いつもご飯でね」
「真ん中に梅干し一個あるわね」
「所謂日の丸弁当よね」
「おかずは色々だけれど」
「何でも田舎のひいお祖父ちゃんがこれが一番豪勢だって言って」
それでとだ、晴香はクラスメイト達に話した。
「うちはお弁当は絶対にね」
「日の丸弁当なの」
「それに決まってるの」
「そうなの」
「何が豪勢なのか」
日の丸弁当のとだ、晴香は昼食の時も思った。
「わからないけれどね」
「ああ、それね」
クラスメイトの一人がここで晴香に言った。
「乃木大将よ」
「日露戦争で活躍した」
「あの人普段は稗を入れたご飯を食べていたけれど」
そうして質素な生活をしていたのだ。
「お弁当は奮発してね」
「日の丸弁当だったの」
「そうだったのよ、当時白いご飯は田舎じゃそうそう食べられなくて」
それだけまだ日本が貧しかったということだ。
「白いご飯はご馳走だから」
「それで奮発になったの」
「だから晴香ちゃんのひいお祖父さんが豪勢だって言うのは」
「日の丸弁当を」
「乃木大将からよ」
「そういうことね」
「立派な人だったし」
乃木大将はというのだ。
「人格も指揮もね」
「今みなおされてるのよね」
「そう、実は名将だったって」
旅順だけでなく奉天での奮戦が再評価されているのだ、乃木希典は率いる将兵の全力を引き出して勇敢に戦わせることが出来る稀有の将だったのだ。
「言われてるし」
「その乃木大将にちなんでだから」
「余計にいいわね」
「そうなのね、何で豪勢なのか」
日の丸弁当がとだ、晴香は思って行った。
「そうした理由からなのね」
「一度ひいお祖父さんに聞いてみたら?」
「そうしてみるわね」
晴香はそのクラスメイトの言葉に頷いた、そしてだった。
実際に家に帰ってから曾祖父に携帯電話で尋ねるとその通りだと答えが返って来た、それで以後彼女も日の丸弁当は豪勢なものだと認識する様になった。そして毎日弁当として食べて楽しんだのだった。
豪勢なお弁当 完
2023・8・24
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