第一章
[2]次話
口裂け女はマスクをしているもの
八条学園には多くの幽霊や妖怪の話がありその中には口裂け女もいる。昭和の頃から夕方になると高等部の校門の前に立っているが。
その彼女にだ、近所の居酒屋に住み込みで働いている猫又お静という名前の彼女が来て尋ねて来た。
「あんたずっとマスクしてるね」
「それがあたしでしょ」
口裂け女は猫又に何でもないといった声で応えた。
「これであたし奇麗?って尋ねて」
「奇麗って答えたらよね」
「マスク取ってもよ」
猫又ににこにことして話した。
「これでも美人かってね」
「驚かせるのよね」
「それで夕方になると毎日ね」
「ここにいるね」
「そうよ、けれどね」
口裂け女はこうも言った。
「毎日ここにいるでしょ」
「この時間はね」
「もう学校にいる人達もわかってて」
自分が口裂け女と、というのだ。
「皆わざと美人って言ってね」
「あんたにマスク外させるのよね」
「そうよ、それでこんなご時世でしょ」
今度は世相の話をした。
「マスクはもうね」
「皆してるわね」
「だからね」
それでというのだ。
「あたしのトレードマークの一つなのに」
「何でもなくなったわね」
「そうなのよね」
「それはあんたにとっては嫌よね」
「仕方ないけれどね」
世相のことはというのだ。
「感染症のことはどうしようもないから」
「私達じゃね」
「しかもずっと前から皆あたしを怖がらなくて」
「驚かせるだけだしね、あんた」
「そんなね、鉈とか鎌で襲わないわよ」
これはないというのだ。
「大鎌で電話ボックス真っ二つにしたとか言われてるけれど」
「お話に尾鰭が付いてね」
「あたしは人を驚かせるだけよ」
あくまでそれだけだというのだ。
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