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百キロ先から戻って来た犬
第一章

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                百キロ先から戻って来た犬
「ちょっとの間な」
「ポチを預かってもらうから」
 三島家の父と母は息子の仁勇黒髪をショートにしていてやや面長で優しい顔で小学五年の彼に家の中で言っていた。
「また落ち着いたら迎えに行くから」
「それまでの辛抱だ」
「僕少しでもポチと離れたくないよ」
 今か家のケージの中で寝ているポチ、茶色と白の毛の雄の柴犬である彼を見てそのうえで両親に言った。
「絶対に」
「そう言うけれどな」
「今うちは大変だから」
「お金がなくてな」
「私達だけで手が一杯なのよ」
「一年位で元通りになるからな」
 父の勝美は息子に言った、息子がそのまま成長した様な外見である。
「お金が貯まって」
「お母さんも働きはじめたし」
 母の未希も言ってきた、穏やかな顔で茶色の髪の毛は長くふわふわとしている小柄でスタイルのいい女性だ。
「一年、本当にね」
「それで肩代わりした借金を返せるんだ」
「だから待ってね」
「一年ね」
「一年待ったらポチが戻るんだね」
 息子は両親にこのことを確認した。
「そうなんだね」
「ああ、そうだ」
「絶対にね」
 両親もこのことを約束した。
「そうなるから」
「安心するんだ」
「わかったよ」
 苦い顔だがそれでもだ、息子も頷いた。
「僕も一年我慢するぞ」
「それじゃあな」
「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんの家に引き取ってもらうわ」
 夫の両親のとだ、母も言ってだった。
 こうしてポチは仁勇から見て祖父母にあたる二人の家に預けられた、その時ポチはとても悲しそうだった。
「クゥ〜〜ン・・・・・・」
「一年だよ、ポチ」
 仁勇はそのポチに涙を堪えて告げた。
「そうしたら迎えに来るから」
「クゥン」
「それまで待っていて」
 ポチにさらに告げた。
「いいね」
「じゃあ戻ろう」
 父が言ってきた。
「そして明日からな」
「一年、何かと我慢しましょう」 
 生活もとだ、母はこう言ってだった。
 仁勇を連れて家に帰った、そしてだった。
 一家は借金を返す為に必死に働き節約した、両親は朝早くから夜遅くまで副業もして働き衣食住は徹底的に切り詰めた。
 そしてだ、遂にだった。
「返せたな」
「そうね」 
 夫婦で話した。
「肩代わりした借金はね」
「それが出来たな」
「それじゃあ」
 その話を聞いてだ、仁勇は言った。
「今からだね」
「今度の休みにな」
「ポチを迎えに行きましょう」
 両親は自分達の息子に微笑んで答えた。
「頑張って借金は返せたし」
「生活にも余裕が出来たしな」
「お陰でね」
「またポチと暮らせる様になったからな」
 二人もこのことを喜んだ、だが。
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