第一章
[2]次話
盲目の犬の友人達
モロッコ南部のサンシャイン動物保護区アガディーにおいてだった。
フランスから来た動物保護のボランティアを行っているフランソワ=ミッテラン白髪の穏やかな顔立ちにグレーの目の初老の神父は保護区の女性スタッフの一人であるヘイゼル=スキート小柄なアフリカ系の彼女に言った。
「大変ですね」
「タムはですね」
「お話を聞きますと」
薄茶色で垂れ耳の大型犬を見て言うのだった。
「皮膚の病気で」
「しかも生まれつき目が見えないです」
「だからこの保護区で、ですね」
「生まれて九年間です」
その間というのだ。
「ここで暮らしています」
「保護されていますね」
「妹のダッチャと一緒に。ダッチャは目が見えますが」
「ワン」
「ワンワン」
見ればそっくりの雌犬が傍にいる、実に仲がよさそうだ。
「同じ皮膚病で」
「こちらで、ですね」
「暮らしてもらっています、ですがタムは幸せです」
スキートはミッテランに確かな声で答えた。
「妹がいつも一緒で私達もいて」
「障害があってもですね」
「無事に暮らせています、それに」
「それに?」
「見て下さい」
スキートがこう言うとだった。
「ニャア」
「ニャオン」
「ミャウン」
保護区の猫達が来てだった。
タムの周りに来た、そしてだった。
彼を囲んで親し気にしだした、スキートはその光景を見つつ話した。
「あの様にです」
「保護区の猫達がですか」
「いつも。寝ている時もです」
「一緒にですか」
「タムといてくれて」
そしてというのだ。
「遊んだり一緒にご飯を食べて」
「仲良くしてくれますか」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「友達でいてくれています」
「そうですか」
「特に」
「ニャオン」
猫の中でだった。
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