第四章、その4の2:エルフの長
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れを武ではなく、言論によって決めるのだ。それが我等首脳陣の最初で最後の役割だと思っている。貴殿ら調停官にもそれに参加してもらい、一票を投じていただく」
唐突な宣告に王国側の二人は一瞬固まるも、目線を合わせて小さく頷き合った。アリッサは厳然とした面持ちで言う。
「承知致した。我等調停官はその賢人会議において、公正に、そして明白に我等の立場を主張するために、一票を投じさせていただく」
「感謝する、調停官殿。・・・もっと話したい所ではあるが、貴方達は余りこの建物に長居をしない方がいい。私の部下は、貴方達が此処に入っているのを良い目で見ていないようだったからな」
「入る前に言って欲しかったよ」
「はは・・・すまないな。・・・では、またの機会に話そうぞ」
「夜は戸締りをしっかりとしておけ。警備の者も深く信用するなよ?分かるな?」
「・・・根は、随分と深いようだ。充分気をつけようぞ。・・・ケイタク殿、行くぞ」
「承知致しました」
二人はそっと立ち上がり、先程以上に気を配りながら入り口へと戻っていき、振り返って凛々しく礼をする。
「ではこれにて、イル=フード殿、ニ=ベリ殿」
「失礼致します」
慧卓が先に出て、アリッサが後に続く。警備の者達が鬱陶しがるように視線を向けてくるも、二人はそれをいざ知らず、エルフの従者に従って仲間の下へと案内されていく。
屋内に残された賢人と将軍は、先までの態度を変貌させていた。まるで王国の者に見せていた態度など仮初のものであるといわんばかりに、親しげに顔を見合わせている。
「・・・どう思う、あいつらを」
「・・・政治には疎そうだが、理性を優先させているのは理解できる。王国の立場というのを理解しているようだ。それ以上は分からん。・・・だが強硬的な態度を取られるよりは、かなりましだと思うぞ」
「同じ意見だ。私から見た感想だがな、アリッサ殿にはかなり期待できそうだ。冷静で、忠実な王国の輩。それでいて我等にも一定の配慮が出来るであろう知性も窺える。あれを上手くコントロールすれば、王国から過剰な手出しは避けられるだろう。
彼女は私には外交をする気があるようだからな。彼女は私に任せておけ」
「では私はあのケイタクとやらを何とかするかな。あの若さにしてはかなり落ち着いているようにも見えた。貴様と同じように期待も出来るが、油断は出来ん」
「そうかそうか。では、老輩の御手並みを拝見するとしようか。果たして文化人上がりの口舌の輩がどこまでやるか楽しみだ」
「見ておれよ。・・・貴様とのケリを付けるのに、横槍など要らぬからな」
「ああ、そうだな」
二人はそう笑みを交えながら、調停の輩には出さなかった茶の用意をし始めた。エルフ民族が大事にする、季節の果物の果汁を落とした茶である。生産した
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