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王道を走れば:幻想にて
第四章、その4の2:エルフの長
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コースだけは何としてでも避けたかった。
 ニ=ベリはもう一つ空いていた藁椅子にどさりと座り込み、落ち着いた口調で続けていく。

「先ずは賢人会の総意として伝えておきたい。此度、この自治領まで馳せ参じてくれて、少なくとも私を含めて、賢人会の者達は安心している。我等保守派と改革派の対立は勢いを増し、此処タイガの森以外では、まともに話し合う場すら無くなってしまった」
「それほどまでに、事態が切迫していると?」
「情けない事だが、事実はそうだ。我等首脳陣は何とか会談を出来るのだが、下の連中は顔を合わせた途端に罵詈罵倒の嵐だ。刃傷沙汰になるのも、無理の無い話しといえよう」
「すまないがその者達にもっと自省してくれるよう厳しく言ってくれんか?此方の国境線にも荒事が起こるようになって、最近では臣民の生活にも悪影響が出ている。非常に困っているのだ」
「出来る限りそうするが、春先までは消えないものだと思ってくれ。そう簡単に治まるものではないからな」
「我等が此処を去るまで、か・・・期待しよう」

 アリッサも一先ずの矛先を治めたようではあるが、イル=フードとは口を開く気はないようであり、彼には目もくれていない。俄かに空気が悪い気がして慧卓は気付かれぬよう頸下を緩めた。

「アリッサ殿、一つ聞きたいのだが」
「何かな?」
「答え得るのであらば答えて欲しいのだが、貴女はエルフに何を望む?」
「何をと?無論、平穏だ」
「平穏か。確かに素晴らしい答えではあるが、それはあくまでも、騎士アリッサ=クウィスとしての答えだろう?一人の人間としての貴女は何を望んでいる?」
「哲学的な問いは止めとけ、ニ=ベリ。所詮は人間なのだぞ、浅はかな答え以外出る筈も無い」
「その浅はかさに人間の深い意思と感慨が込められているのだ。お前とて知らない筈は無いだろう?」
「ふん、どうだかな」

 はぐらかすように排他的な姿勢を崩さぬ老人に溜息を隠さず、ニ=ベリは再びアリッサへと視線を戻す。

「アリッサ殿、どうか聞かせてもらえるか?貴女の想いを」
「・・・・・・難しい質問だ。私は此処に座る以上、騎士として、調停官として己を律せねばならない。そう信じているのだ。この姿勢を簡単に変える事は出来ない。
 すまないが、今すぐに答えを申し上げるという事は出来ない。だが何時の日か、私が王都へ帰るまでには必ず答えを出そう。それが一人の人間としての、今の私の答えだ」
「ほら見ろ、煙に巻いてきおったわ」
「・・・答えを出さないと言うのも貴女の意思だ、私はそれを尊重したい。だが五ヵ月後までには答えを出して欲しい。冬の霜が払われる頃に、我等エルフは賢人会議を開く。私とイルはそこで、エルフの大義を決める心算だ」
「エルフの、大義?」
「そうだ。エルフの民がどちらの旗を掲げるか。そ
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