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王道を走れば:幻想にて
第四章、その4の2:エルフの長
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勢がどちらかに転ぶか見定める心算だな?趨勢が覆せぬタイミングまで、真の言葉を潜めている心算なのだろう?」
「な、なんの事か理解しかねるが?我等は偽り無く、エルフの民草に本当に平和な生活を送って欲しいとーーー」
「人間がエルフの政に口を出すなっ、無礼者!」

 余りにも強気な言動に、慧卓は目を瞑りたくなった。最早友好や穏便などという言葉は微塵も出る余地が無い。エルフ側からの極めて挑発的で攻撃的な言動に、王国の代表を自負するアリッサが、その重責を全うせんとばかりに言動を激しくする。

「・・・これは一体何の冗談だ、イル殿。我等は友好的なーーー」
「駄目だ駄目だ!これは我等の問題なのだ、調停官よ!王国が手を出すなど断じて許される事ではない!まして貴殿は近衛騎士ではないか!言葉で無理と悟れば武を以って語るのは目に見えている!!」
「言い掛かりは止めて戴きたいっ!貴殿は自らの言葉で、調停を受け入れるという決定を心算か!」
「私は認可しておらん!それもこれも全部ーーー」
「俺のせい、とでも言いたいのかね?」

 鶴の一声にも似た落ち着いたものに三者は顔を向ける。此処まで見てきたエルフとは一風変わってその壮年のエルフは、逞しき肉体を鎖帷子で遠慮なく覆って明るい緑の外套を羽織っている。また腰には二振りの剣が挿されており、その風体や鷹のような顔にも似て威厳のある感じを醸し出していた。男を見てイル=フードが、苦手な食べ物を見た時と同じように唸りを漏らした。

「・・・ニ=ベリ・・・」
「イルよ、少しは落ち着いたらどうだ?直ぐに興奮するのは年老いた身体には悪い影響しか与えん」
「ちっ、ごちゃごちゃと・・・」
「ついでに言えばだがな、決定を下したのはお前でも俺でもない。賢人会の総意だ。お前とそのシンパだけが反対していた、そうだったな?」
「っっ・・・聞いて居ったのならそうと言わんか・・・」

 ぶつぶとしながらも、イルは先程とは打って変わって不承不承にも語気の荒さを治めていく。この壮年のエルフは老人にとっていたく苦手な相手であるらしい。

「会談に遅れた御無礼をお許し戴きたい、調停官殿。自分はエルフ自治領防衛隊の大将をしている、ニ=ベリと言うものだ」
「・・・調停官のアリッサ=クウィスだ。此方は補佐役のケイタク=ミジョー」
「どうぞ、宜しくお願いします。・・・入ってきてくれて助かりました」
「入らなければ、貴殿らは王国に帰っていただろうからな。そうなれば全てがイルの思うがままだ。なぁ、イル?」

 そう言われたイルは何も言わず、不機嫌な面構えを崩さない。彼にとってみれば面白くない事態であるが、慧卓にとっては一先ずの安堵を覚える事態である。会談すら出来ない状態になっては調停官の調停足る所以が無くなってしまうからだ。面子丸潰れの左遷
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