第四章、その4の2:エルフの長
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何こうする方ではありません」
「寧ろそうなったらヤバイよね」
「聞こえてるぞ」
凛々しき睨みに肩を竦める。やがて彼らが目指していた建物が近付いてくる。外観自体は他のそれと似たような造りであるが、唯一違う事に、警備の者が建物への小さな階段を守っている。厳しき面構えに鋭い槍は、王都の衛兵と同じ雰囲気を醸していた。
建物の入り口に、一人の老エルフが立っている。蛇のような赤い瞳に他を嫌うかのような派手な赤い衣装。賢人イル=フードが其処に居た。
「・・・よくぞ、遥遥遠く王都から参られた、調停官殿。賢人会の長老、イル=フードだ」
「・・・お会い出来て光栄だ。マイン王国北嶺調停官、アリッサ=クウィスだ」
「同じくマイン王国北嶺調停官補佐役、ケイタク=ミジョーであります」
「うむ。補佐官殿も良く来られた。どうぞお二方、中に入られよ。そこでゆっくりと話をしよう。・・・他の方々は私の従者が案内しよう。体を休められる場所にな」
「お気遣いに深く感謝する。・・・では皆、また後でな」
「はい。向こうでお待ちしていますね」
キーラが頭を垂れて、一向は従者の案内の下に離れていく。パウリナが軽やかに手を振るのに笑みを返して、慧卓は幕を潜りながら建物の中へと入っていく。イルは藁椅子へと二人を案内した。
「掛けてくれ」
「失礼する」「失礼致します」
繊細な編目をしたその椅子に座って思う。見かけによらず、かなり座り心地の良い椅子である。馬車によって傷みつけられた尻が癒されるかのようだ。
「どうか楽にしてくれ。茶は出せんがな」
「其処まで気を使ってくれなくても構わんさ」
「ふむ、そうか」
「・・・会談は、ニ=ベリ殿も含めて行われると思っていたのだが」
「奴の名を出さないでくれ。今はその名を聞くだけで感覚が鋭敏になる」
「す、すまない」
待ち望んでいた会談は、どうにも悪天候が予想されるようなスタートである。それに拍車を掛けるかの如く、イルは本心を隠さずに慧卓らに聞こえるような声で言う。
「このような情勢下に王国が手を出してくるとはな。王宮は余程己の利を叶えたいと見える」
(・・・イルめ。牽制にしては強すぎやしないか?こんな事したアリッサさんも強気に出るしかないじゃないか・・・)
ちらと彼女を窺うと、案の定、近衛騎士は険しき顔付きをしていた。どこか不満を滲ませながらもアリッサは安らかな声色を取り繕う。
「イル殿、我等は王宮の特使として此処に来た。国王陛下の下賜によってな。陛下の御心を恐縮ながら述べさせていただこう。・・・王国は北嶺での紛糾の拡大を望んでいない。望むべくは平穏だ。我等調停官はそのための手助けが出来ると確信している」
「確信するのは勝手だ。それに、貴殿らの真意はもう読めておる。事態の趨
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