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王道を走れば:幻想にて
第四章、その4の2:エルフの長
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・・なるほど。通りでブルーム卿が熱心に計画を練っているわけだ。・・・あの案、私の見立てによれば後一月も満たぬうちに施行されますぞ。一行政計画としては異常な早さだ。卿の熱心さが伝わってくる」
「そんなに速いのですか?」
「はい。その通りですよ、王女殿下。卿は役人達を馬車馬の如くこき使うのが趣味で御座いますから」
「まぁ、手荒な趣味です事」
「はっは、男たる者、憧れる姿ですよ」

 黄色のコスモスが咲く枝に小さな芋虫が登っている。緑の体をくねくねと身動ぎさせながら、少しずつ花に近付こうとしている。時折中庭を擦り抜ける風に身を揺らされているようだが、幾つもの足は枝から離れそうにもなかった。

「皆が余所余所しいと申されましたが、私には一つ、その理由がわかるかもしれません。それは皆が貴女の姿に、此処には居ない、第一王女の姿を垣間見たからでしょう」
「・・・そう、なのでしょうか」
「きっとそうです。令嬢の方々というよりもその親御の方々は特に、貴女以上に第一王女を畏れ、敬っておりましたからな。噂は蜘蛛の糸のように、下へ下へと降りてくるのです。そして親子共々、王国の女神を畏敬するのですよ。・・・そしてブルーム卿もまた、その姿に憧れた者でありました。改めて申し上げるのであれば、第一王女は本当に、素晴らしい方でありました」
「・・・私、あの人に近付いていけるかな」
「きっとそうなります。貴女は、民草を牽引する女神になりますよ」
「そんな大層な人にはなれないですよ、私なんて。・・・でも、姉さんの代わりにならなれるかもしれません。姉さんのように皆を奮い立たせて、勇気を与える。それで喜んでくれたり、助かる人が居るなら、私はそうなりたいです」

 呟きにも近い言葉であるにも関わらず、どうしてか、ハボックの胸には泉のように感慨が沸き起こっていた。愛娘の成長を見届ける父の如きそれにも近い感情である。小さくも愛らしき少女が目の前ですくすくと育っていると実感して、誇らしくも寂しいような気分を抱くのである。
 コーデリアはカップに残っていた最後の一口を飲み込み、迷いの無い瞳を騎士に向けた。ハボックははっとしつつも、その内心を表情には出さなかった。

「そろそろ政務に戻らなくては。御話をして下さって有難う御座います」
「いえいえ、これも王女殿下のためで御座いますから。・・・ああ、そういえばもう一つお伝えしたい事が」
「?」
「実は北嶺への伝令として、ミシェルとパックを派遣する事になっているのです」
「あの方々を?」
「ええ、監察官を通じて此方の意向を伝えるためです。クウィス領内に着いたら一方を現地に留まらせて、もう一方をエルフ自治領へ向かわせます。
 それでなんですが・・・北へ赴かせるついでに調停官の方々に宛てた手紙も持たせようかと、ミシェルらは考
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