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王道を走れば:幻想にて
第四章、その4の2:エルフの長
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 白い陶器のカップに注がれた薄緑の湖面。白い湯気と香りを昇らせるハーブティーである。口に含むだけで、その軽やかな味わいが肩と手首に溜まった凝りを解し、頭のイライラを消してくれるような感じがする。政務の疲れを解す、一時のオアシスである。

「・・・もう夏も終わりか」

 中庭の木のベンチに座りながら、コーデリアは空を見上げて呟く。昨日の雨跡はからっと晴れており、薄い雲を靡かせるだけに留まっている。雨露は丁寧に整えられた庭草や花々に輝き、時と共に宙へと戻り、地面に吸い取られているようであった。
 ソーサーにカップを置いた時、ふと、傍に控えていた侍女が近付いてきて彼女に囁いた。 

「ドルイド大隊長が此方に」

 コーデリアがふと面を上げると、中庭を横切るようにハボック=ドルイドが近付いてきて、敬愛を込めた一礼をした。

「コーデリア王女殿下。殿下にお伝えした事が御座います」
「なんでしょうか、ハボック殿」
「先刻、クウィス領に居る友人から文が届きました。『調停団は無事にエルフ領内に入り、エルフの街に着くであろう』との事。おそらく、今日の昼過ぎには街に着くかと」
「・・・そうですか。それを聞いて安心しました」

 小さく笑みを浮かべて息を漏らす。心よりの安堵を感じ取り、ハボックもまた柔らかく笑んだ。

「御友人は皆無事である事でしょう。アリッサ殿は当然として、キーラ殿や侍女の者も。そして貴方が慕うケイタク殿も」
「・・・怒ったりは、しないのですか?」
「?」
「私がケイタクさんを慕っている事です。王女と騎士の階級を越えて、彼に心を奪われている事に。・・・他の方には余り良い目で見られないのですが」
「それは初耳で御座います。例えば誰が貴女の事を?」
「・・・令嬢の方々など」
「なるほど。ですが気になさらぬ方がいいですよ。彼女達は貴女に妬いているのですから。あの方々が欲しい物を貴女が独占しているのです」
「それは?」
「ケイタク殿の心です」
「ふふ・・・だと思った」

 軽妙な一句に軽やかな笑い、コーデリアは一口茶を啜った。ほんのり薫る苦味もまたこの茶の良き所である。味わいと冗句を愉しみつつも、コーデリアは困ったように眉を緩い八の字にした。

「ちょっと誇らしい気もしますけど、肩身が狭くなった気がします。最近、皆の視線が余所余所しくなってきた感じがするんです。視線がどうも、遠い何か怖いものを見るような感じで、変な気分です。何時からでしたっけ・・・そうだ、憲兵の監視機関を作ろうと提案した時からでした」
「おや、あれは貴女が提案されたので?」
「いえ。実際はレイモンド執政長官とブルーム卿の案に、私が修正案を提示しただけです。その案が会議で採択されて、今は卿がそれを推し進めていると聞いております」
「・
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