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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第91話 カプチェランカ星系会戦 その2
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改めて敬礼して自分の席に戻ろうとする俺を爺様は引き止めた。

「右翼部隊の攻勢・前進は明らかに無謀じゃが、敵も後退を止めない。ジュニアは敵の意図をどう見る?」

 爺様の質問に振り返り、メインスクリーンの端っこに映る敵と味方の相対状況を確認し、爺様の横に立つモンシャルマン参謀長の頷きを経てから応えた。

「敵の後退が星系全体を見た戦略的な要因か、惑星カプチェランカ周辺宙域に限定した要因かで、判断が異なります」
「ではまず前者の場合は?」
「休息時間の確保です」

 中央のイゼルローン駐留艦隊はともかく、両翼のヴァルテンベルク・メルカッツ両部隊は、シトレのカプチェランカ攻略に応じて緊急的に集められた部隊と考えられる。ヴァルテンベルクは恐らくはオーディンからの長駆行軍の末、メルカッツは第四四高速機動集団と数度にわたる交戦後。イゼルローン要塞から補給物資は新たに届いているだろうが、時間的な休息はイゼルローン駐留艦隊に比して少ない。一度仕切り直したい、と考えてもなんらおかしくない。

「……では後者の場合は?」
「惑星カプチェランカ周辺宙域からの離隔と、反撃空間の確保です」

 背後に惑星カプチェランカを背負う形で布陣している同盟軍を引きずり出し、陣形を乱した上で、強力な一撃により一片を粉砕し、同盟軍全体の継戦能力を崩壊させる。最初はヴァルテンベルクが第四四高速機動集団に仕掛けたが失敗した。であれば次はメルカッツが仕掛けてくるのではないか。

「味方右翼部隊は交互射撃による長距離砲戦に徹している。宙雷艇による近接戦闘を挑むにしては距離が開いているが、それでも仕掛けてくると?」

 モンシャルマン参謀長が首を傾げながら俺に問いかける。確かに長距離砲戦距離を維持して後退する必要はないし、急速前進して飛び込むには時間的にも遠い。しかし味方右翼部隊の後方には空間が開きつつある。

「敵に増援部隊がいたらどうでしょうか?」
「……味方右翼部隊の後背を突き、挟撃するということか? しかし跳躍宙点へ長距離偵察に出ている第八艦隊の各小戦隊からは何の連絡もない」

 いくら咄嗟砲撃があったとしても、周辺警戒を強めている二〇隻以上の哨戒隊を、通信を発する間もなく一瞬で撃破することは不可能だ。となれば跳躍宙点から新たな敵艦隊が到着した可能性は極めて低い。となると……

「司令官閣下。至急哨戒隊を出して、後退中のヴァルテンベルク艦隊の動きを確認させたいのですが?」
「儂らが前進を躊躇している間に戦力を抽出し、敵左翼部隊を増強していると、ジュニアは考えるんじゃな?」
「はい」
「よかろう。第八七〇九哨戒隊に隠密偵察を命じる」
「閣下、第八七〇九哨戒隊の戦力は現在たったの四隻ですが……」
「この場合は数が少ない方がよい。数が多いと注
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