第91話 カプチェランカ星系会戦 その2
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対する不義だ。
「まったく思いません。中級指揮官は目まぐるしく変化する局地的な戦況に対応する為、軍法によって臨機応変に対応する権限を持っております。ただ指示待ちして無為無策のまま、指揮兵力を打ち減らされることを許容するのは、中級指揮官として無能であると言わざるを得ません」
「な……」
「我々は第一〇艦隊が到着するまで、戦線と戦力を維持しなければならない。それが事前会議にて決定した方針であります。開戦より既に八時間、真正面からの砲戦を墨守していたとすれば、当集団は既に兵力の三分の一以上を失い、敵にさらなる積極的意思があれば戦線はとっくに崩壊していたでしょう。副参謀長閣下は、それでも良しと仰られるのですか?」
結果論で物事の良し悪しを判断するのは間違いだ。上級司令部の命令に従わないことは、軍という暴力組織において秩序を乱す行為であることも、だ。だがそこまで命令に従えと強く言うのであれば、最初から『戦線を維持せよ』という抽象的な命令を出さず、随時細部にわたる行動指示を出すべきなのだ。
「貴官が言うのは結果論でしかない。敵右翼部隊に積極的意思があれば、第八艦隊の予備兵力から増援を出していた」
「どれくらいですか?」
「どれくらいだと?」
「被害関数通りとして、開戦六時間後。第四四高速機動集団が一三〇〇隻、敵右翼部隊が二八〇〇隻という状況下になった時に敵右翼部隊が前進を開始したとして、第八艦隊からどれほどの増援を出していただけましたか?」
「二〇〇〇隻は出す。第四部隊と、司令部直属の独立部隊を出す」
「その時点で第八艦隊正面に対峙する敵中央部隊と第八艦隊の戦力差は一万四〇〇〇隻対一万隻。そこからどうやって二〇〇〇隻を抽出できるのですか?」
一万隻から二〇〇〇隻を抽出すれば、中央正面対峙戦力は一万四〇〇〇隻対八〇〇〇隻。もしかしなくても中央部隊の戦線崩壊は時間の問題となる。それが分かるだけに、マリネスク副参謀長はおし黙った。ラスールザーデ参謀長は最初から口を挟んでこなかったが、納得しているようにも見える。重い沈黙が司令艦橋中央部に圧し掛かりかけた時、シトレがようやく口を開いた。
「ボロディン少佐。第四四高速機動集団のこれまでの行動については十分理解できた。これからも臨機応変の奮戦も期待していると、ビュコック司令に伝えてほしい」
「ハッ!」
「それと可能であればスパルタニアンでも構わないので、『敵の行動についての逐次連絡』をヘクトルに寄越してほしい。中央部にいる我々も数的不利な状況下にある。忙しくて細かいところになかなか目の行き届かないところもあるかと思うのでね」
それはシトレから俺に対する試合終了のゴング。命令違反云々について第四四高速機動集団にお咎めはなし。だが独自に行動する際は、事後報告でもいいからなるべく
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