お誕生日おめでとう
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」
突然ハルトの声色が、冷静になる。体を起こしたハルトは、どこか遠くを見つめていた。
突然の落差に驚きながら、可奈美は彼の言葉の続きに耳を傾ける。
「俺の願いは……俺が、聖杯戦争で叶えたい願いって……人間になることじゃないのか……?」
「人間に……なりたい?」
可奈美の問いに、ハルトは放心したように可奈美を見つめる。やがて頷き。
「うん。そうだね。俺……皆と同じ、人間になりたかったんだ……」
ハルトは体を震わせる。
右手に刻まれた令呪を握り締め、自らの手をつねり出している。
だが、そんな彼の肩を、可奈美は抱きしめた。
「大丈夫。もう、寂しくないから。私たちが、ずっとそばにいるよ」
ぎゅっと、締める力を強める可奈美。
ハルトの体は、温かい。人間のそれと、何も変わらない。
「……はははははっ! あっはははははははは!」
ハルトの大きな笑い声が響く。
これまで聞いたことがないような彼の笑い声に、可奈美は目を丸くした。
やがて落ち着いたハルトは、顔を背ける。
「そっか……俺、結構寂しかったのかな……」
「ハルトさん……」
手を放し、先に立った可奈美。ハルトへ手を伸ばすと、彼はその手に触れようとして、止まった。
「あ……」
「……だから、もう独りじゃないよ」
可奈美はそう言って、ハルトの手を握り返す。小さな力で、身長の高いハルトを引き起こした。
「ハルトさん」
どんな顔をしているのか。どんな格好をしているのかは分からない。
ただ、可奈美はこれだけを言った。
「お誕生日、おめでとう」
「……もう、昨日だよ」
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