お誕生日おめでとう
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美の目を、南中高度の太陽が直撃した。
すぐさま目を反らすと同時に、可奈美は直前の記憶を探る。
「……ハルトさん!」
「何?」
体を起こした可奈美は、すぐ背後から聞こえてきたハルトの声に振り向く。
すぐそばにあった、ハルトの顔。そして彼の体勢を見て、可奈美は今まで、彼の膝の上で倒れたことを理解する。
「あ……私……」
「勝ちだよ。可奈美ちゃんの」
何か言おうとしていたのに、ハルトのその一言だけで、可奈美は全てを忘れた。
「え? ……え?」と、戸惑っていると、ハルトは繰り返した。
「だから、可奈美ちゃんの勝ち」
「私の……私が、勝ったの?」
「そうだよ」
ハルトの返答に、可奈美は再び体から力が抜けた。そのまま倒れ込んでいくと、ハルトの膝元に頭が落ちた。
「私が……よかったよお……」
太陽が眩しい。
可奈美は目元を右腕で覆いながら声を絞り出した。
「可奈美ちゃん……何で、ここまで俺に?」
「だって……まだまだ、ハルトさんのこと、全然知らないんだもん。今度こそ……本当のハルトさんのこと、知りたいよ」
その言葉に、ハルトは何も答えない。
やがて彼は、大きく息を吸い込んで、その場で寝転がった。
「ハルトさん?」
「何でかな……俺、いいのかな……? こんな、ファントムなのに……」
「ファントムでも人間でも関係ないよ。私は……ハルトさんといたい。知りたい。ハルトさんは違うの?」
可奈美は上半身の体を起こす。可奈美と入れ替わって地面に横になったハルトは、可奈美と同じように右腕を目元に当てていた。
「もう一回、同じことを言うよ。自分のことを認めてあげようよ。ハルト君が亡くなってしまったことを忘れようなんて言わないけど、私は……私達は、ハルトさんが大好きだよ。だから、ハルトさんも……自分のこと、少しは大事にしてあげてよ」
その言葉に、ハルトは動かない。目を隠しながら、口元を歪ませている。
「ねえ、ハルトさん。ハルトさんは……もしかして、寂しかったんじゃないの?」
「寂しい? 俺が?」
その言葉は、自分でも何で出てきたのかが分からない。
ただ、可奈美の腕が……指先が触れる千鳥から伝えられている気がする。
可奈美はその直感を信じながら、その言葉を信じる。
「うん。……私達と、美味しいって気持ちや、楽しいって想いを共有出来ないのが……寂しかったのかなって」
千鳥から、熱をもらっている。何かから勇気をもらうことを感じながら、可奈美は続けた。
「でも、それも教えてよ。ハルトさんの気持ちも全部。皆で、ハルトさんのことを支えてあげるから。だから……」
「……皆と同じになれないのが寂しい……か……確かにね。もしかして……
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