お誕生日おめでとう
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「嫌だよ……ハルトさん……!」
可奈美は顔を下げながら言った。視界が前髪に隠れ、ドラゴンの姿を直視できない。
動きが朦朧とする中で立ち上る可奈美。
「ハルトさんと……本当のハルトさんと分かり合うことないままなんて……終わりにしたくないよ……!」
「……俺は、ファントムだ」
ドラゴンの背びれがまた発光。
赤い炎が、その口に宿る。
「人の希望を……否定する……!」
そして、発射。
生身の可奈美へ真っすぐ向かう熱線。
もう、疲弊し切った可奈美。やがて倒れ込むように体を傾けた可奈美は、大きく腰を下げ、熱線を避けた。
背中に焼けるような痛みが走る。だが、顔を歪める体力さえも残っていない。
「……だから……よく見る、よく聞く、よく感じ取る……」
可奈美の声は、ほとんど誰にも聞き取れないもの。ほとんど意識のない状態ながらも、千鳥を握る手だけには力が強く入っていた。
『可奈美……可奈美!』
___……!___
『ほら! まだまだ頑張って!』
誰かが、可奈美の背中を強く押した気がする。
ふらふらの体が、大きく低く体勢を下げる。
背中に、熱線の熱さがかする。鋭い熱さに顔を歪めながら、可奈美はドラゴンへ接近。
「やあっ!」
振り抜き、その肉体を切り裂く。
大きく身を歪めたドラゴンへ、さらに追撃としてもう一発。
先読みしたドラゴンがその腕で防ぐが、まだドラゴンへの攻撃は終わらない。
全身を使っての突撃。ドラゴンの前後左右、どこからも攻撃の手を加えていくことで、よりドラゴンの体を切り刻んでいく。
「この動きは……!?」
驚いたドラゴン。
その口が、どことなく、可奈美の母の名を綴ったようにも見えた。
可奈美は動きを止め、大きくジャンプ。自らの全体重を持って、千鳥を振り下ろす。
「無心烈閃」
小さな声で、可奈美の口はその技名を宣言した。
縦に大きく切り裂いた斬撃。その勢いとともに、可奈美は上空へ大きく跳び上がり、一気に降下とともに千鳥を振り下ろす。だが、同時にドラゴンもまた、最短のチャージによる熱線で迎え撃つ。
それぞれ同時に命中。可奈美は痛みと熱さを受けながらも、大きくドラゴンの体を切り裂いた。
ドラゴンの足元で、千鳥を振り下ろしたままの体勢の可奈美。可奈美の視界に移るドラゴンの足は、徐々にハルトのものに変わっていく。
「俺……手加減なんてしてなかったんだけどな」
そして、重い音。
それが、可奈美の体が奏でた音だったのか。ハルトが倒れた音だったのかは分からない。
ただ。
どこからだろうか。
可奈美の意識は、そこで途切れた。
「……はっ!」
目を覚ました途端、可奈
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