お誕生日おめでとう
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くる。
やがて、ドラゴンの重力による拘束が解かれる。
火力に集中したということを理解した時には、すでに可奈美は回避できない。
ドラゴンの放射熱線は、そして容赦なくその口から吐きだされる。可奈美の小柄な体を祭祀礼装ごと飲みつくしたそれ。
「う……ぐあああああああああああああ!?」
写シと祭祀礼装。
二重の防壁を体にしているのにも関わらず、それはいとも簡単に消し炭にされていく。
解除された祭祀礼装。さらに、写シを解除され、転がった可奈美はそのまま吐血した。
「がはっ!」
全身、肌という肌が、焼き焦がされたような感覚に襲われる。
体が震えるほどの痛みを感じながら、可奈美はドラゴンを見上げる。
口から煙を吐きながら、ドラゴンはこちらを見下ろしている。
一歩、また一歩と歩み寄りながら、ドラゴンはその爪を振り上げた。
「っ!」
可奈美はすぐそばに落とした千鳥を拾い上げ、ドラゴンの爪を受け流す。
「へえ……まだ元気そうだね」
「まだまだ……戦えるよ!」
可奈美は左手で地面を突き飛ばし、起き上がる勢いとともに千鳥で切り裂く。
多少怯んだが、ドラゴンの圧倒的優勢には変わらない。
再びの突撃。
可奈美は大きく避け、千鳥を構える。
「はあ、はあ……! 写シ!」
可奈美は叫ぶ。
すると、千鳥の力により、可奈美の体を白い霊体が包む。
だが、写シは即消失、可奈美の体は生身に戻ってしまう。
「え? そんな……写シ!」
可奈美はもう一度と、全身に力を込める。
再び白い霊体が身を包むが、それは数秒ですぐに解かれてしまう。
「そんな……どうして……!?」
「可奈美ちゃん自身の体が、もう持たないんじゃないの?」
ドラゴンの問いかけに、可奈美は息を呑んだ。
祭祀礼装・禊。
刀使として驚異的な力を齎すが、その代償として、可奈美の体力の大部分を奪う。以前も、敵の目の前で倒れたことがあった。
その上、まともにドラゴンの凄まじい熱戦を食らっている。まだ立てる方が奇跡だろう。
「終わらせようか……可奈美ちゃん」
ドラゴンの右腕に、赤い光が宿っていく。
そのまま、生身の可奈美へ放たれる突撃。可奈美は持前の反射神経でそれを防御するが、防ぎ切れなかった威力は容赦なく可奈美を襲う。
「うわっ!」
可奈美の肉体に容赦なく打ち付けていく魔力の暴力。全身に切り傷を作りながら、大きく地面を跳ねる。
「がはっ!」
意識が遠くなり、くらくらする。
ドラゴンの姿が、暗い瞼に挟まれては薄くなっていく。
「嫌だ……」
ふと。
その言葉が、唐突に可奈美の口から突いて出てきた。
「可奈美ちゃん?」
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