本気の勝負
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見つけた。
すでに太陽が高く上るころ。
昨日から一晩にかけてずっと探していたから、可奈美の全身には疲労が蓄積し、真っ直ぐ歩くのも難しくなっていた。
「ハルトさん……」
松菜ハルト。半年も一緒にいたのに、何一つ彼のことは分からなかった。
「……可奈美ちゃん」
ハルトは可奈美を真っすぐ見据えながら言った。
山道。周囲が相変わらず春の緑に囲まれたその場所で、今坂道の上の方にいる彼もまた、戸惑いながら風下の可奈美を見下ろしている。彼の方が可奈美や仲間たちを探していたのか、それとも逃げるように彷徨っていたのかは分からないが、顔を見た途端、彼は戸惑ったような表情を浮かべていた。
「可奈美ちゃん……俺は……」
何かを伝えようとしているハルト。
だが彼の口は、おそらくその意思を反映していない。
少しだけ、沈黙が流れる。
二人をそれぞれ風が囲み、それぞれを押し出しているようだった。
特にハルトの方は、ようやく何か言葉を紡ごうとしている。だが、やがて口を噤み、口を開いた。
「……一人で来たの?」
「え? あれ? 真司さんと士さんは……」
可奈美は振り返る。
だが、ともに白い紳士と出会った二人の姿はなかった。
「あちゃ……私、二人を振り切ってきちゃったみたい」
「何やってるのさ……」
ハルトは苦笑した。
可奈美も苦笑して、ハルトの顔を正面から見つめた。
「……ハルトさん、そういえばいつもそんな笑顔だよね」
「え? どういうこと?」
「……」
可奈美はハルトの反応に答えず、空を見上げた。
眩しい太陽に、可奈美は思わず目を細める。
「ねえ。私、半年も一緒にいたのに、ハルトさんのこと、全然知らないね」
「そうかな?」
ハルトの声は、いつもの飄々とした声色が覆われていた。彼の「そうかも……」という継ぎ足しに、可奈美は思わず噴き出す。
「まあ、教えられるわけないしね……こんな出自」
「私達のこと……信用していなかったの?」
「……そうかも。でも、可奈美ちゃんはうすうす感づいていたんじゃない?」
ハルトの言葉に、可奈美はほほ笑んだ。
「まあ、ちょっとおかしいなとは思ったよ。入れ替わった時も、なんかおかしかったし。味覚もなかったし。それに何より」
可奈美が沈黙を発する。
「ハルトさんの笑顔、いつも陰ってるように思えてならなかったから」
「……そっか」
ハルトは頷いた。
「でも、ハルトさんがファントムだったとは思わなかった……分かるわけないじゃん」
可奈美はそう言いながら、千鳥を強く握る。
「でも、悔しいなあ……」
「悔しい?」
「私、剣で相手のこと、大抵は理解できる自信があっ
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