本気の勝負
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の目の前にいるハルトさんがいたからだよ」
可奈美は、元いた場所で、足を止める。ゆっくり振り向き、ハルトを真っすぐ見上げる。
「チノちゃんたちの学校を守ったのも、アマゾンの事件を止めたのも。ムー大陸を食い止められたのも。紗夜さんを守ったのだって、コヒメちゃんを助けたのだって、ハルトさんがいなかったら、きっと難しかった。それに、アカネちゃんをトレギアから解放したのだって。全部……全部! 今私の目の前にいるハルトさんがいたからだからだよ!」
可奈美は真っ直ぐハルトを見上げた。
「それは絶対、松菜ハルト君じゃできない! 私が知ってる、ドラゴンのファントムである、ウィザードでもある、ハルトさんだからだよ! きっと私は、ハルト|君《・
》じゃ笑顔になれない! 私が笑顔になれるのも、ハルトさんだからだよ! だから……」
可奈美の体が震えだす。声が小さくなりながらも、可奈美は続けた。
「だから……自分をそんな風に言うのはやめようよ。生きている自分を、許してよ。私が大好きな松菜ハルトさんを、否定しないでよ」
「……ごめん」
ハルトは首を振った。
「だったら……」
ハルトが否定しようとする前に、可奈美は千鳥を抜く。いつもの手に馴染む刀の重さが、可奈美の体に沁みていった。
千鳥を抜刀するときに聞こえてくる、金属同士が擦れる音。あまりにも今までの可奈美が知るものが少ないこの状況で、唯一可奈美がよく知る音だけが、可奈美を正気へつなぎとめているようにも感じた。
その音を背負いながら、可奈美は語りかけた。
「だったら、戦おうよ。本気の私と。本気のハルトさんで」
右手には千鳥を。
左手には、鈴祓いを。
それは、可奈美が本当の意味で全力を出すことを意味していた。
ハルトも目を細めながら、大きく息を吐く。
「……君だったら、やっぱりそういうこと言うよね」
「うん。私は、言葉での対話より、剣を通しての会話の方がやりやすいから。私は、ハルトさんのことをもっと知りたい。もっと知るには、ぶつかり合うのが一番だから」
「それがたとえ……ファントムの俺でも?」
赤い眼のハルト。その顔に、模様が浮かび上がる。人間のものではない、怪物の文様。
「うん。……ハルトさん。私は、いつだって……たとえハルトさんがどんな存在だったとしても。ずっと、ハルトさんの味方だよ」
可奈美が言葉を紡いでいる最中でも、ハルトの紋様は、ゆっくりと顔から全身へ行き渡っていく。
やがてハルトの背中を突き破り、大きな翼が羽ばたくのと同時に、可奈美は宣言した。
「だから。これは、そのための本気の勝負」
「今の俺は、手加減なんてできない。君を……殺すつもりでやる」
「うん。い
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