第3部
ルザミ
ただ一人の罪人
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「くそ……。こんなことならザルウサギのわがままに付き合うんじゃなかった……」
午前中の水遊びを激しく後悔しながらユウリが鬱々と呟く。
なぜこんなことを言い出したのかと言うと、フィオナさんの家を出た後、シーラの希望通り結局近くの海岸で水遊びをすることになったからだ。
「そうは言うけどユウリちゃんだって、滅茶苦茶はしゃいでたじゃない♪」
「ふざけたことを言うな。はしゃぎすぎて沖に流されそうになったのはどこのどいつだ?」
シーラの話は明らかに盛っているが、彼女が沖に流されそうになったことは本当だ。私が砂浜で綺麗な貝を探していたころ、シーラは波打ち際でナギと遊んでいた。すると彼女は足を滑らせてしまい、たまたま来た大きい波に襲われ、危うく流されそうになったのだ。傍にいたナギがすぐに助けなければ、大変なことになっていただろう。
ちなみにユウリは最初私たちから離れるように一人砂浜に座っていたが、シーラとナギに絡まれ喧嘩になりながらも、最終的には彼とナギでどちらが多く浜辺のカニを取れるかの勝負となり、珍しくナギが勝つという結果になった。往生際が悪いのか、ユウリはその後も何度かナギに勝負を挑んだが、小さいころからナジミの塔の近くの海でカニ取りをしていたナギにはどうしても勝てなかった。
……言われてみたら確かにいつものユウリよりははしゃいでいたかもしれない。
そんな二人のやり取りを思い出したせいか、緩んだ顔になっているところをユウリに見られてしまった。
「おい鈍足。何人の顔見てニヤニヤしてるんだ」
「べ、別にニヤニヤなんかしてないよ」
こういうことに目ざといユウリが私に突っかかってくる。
「もう、そんなことで目くじら立てたらミオちんに嫌われちゃうよー?」
横から口を挟むシーラに、怒りの矛先が彼女へと変わる。
「黙れ! もとはと言えばお前が……」
「なあ、あの家がそうじゃねえか?」
我関せずのナギが指さしたのは、木と石で組み立てた小さな家。フィオナさんが教えてくれたセグワイアさんという人の家の特徴にそっくりだった。ちなみにフィオナさんは自宅で研究を続けている。
「すいませーん!!」
コンコン、と鍵のついていない扉を叩くと、ほどなく内側から扉が開いた。
「おお。あんたらはフィオナんとこの……。昨夜はありがとな。久々に楽しかったよ」
「いえいえ、こちらこそ……って、あれ?! あなたはあの時の……」
そこにいたのは、私たちが昨日島に着いてから、初めて出会った島の人だった。この人に教えてもらったから、私たちはフィオナさんと会うことができたのだ。
「昨日は色々教えてくださって、ありがとうございました」
「いやあ。まさかそこの坊っちゃんが本当にフィオナの息子だとは思わなかったよ。すごい偶然だなあ」
そういってナギの方を見
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