第一部
第四章 いつだって、道はある。
イタチ
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だ。任務という線もあり得ない。ユナトはその能力の性質ゆえ、滅多に里を離れることはない。
「がっ……牙旋牙ァ!!」
身に纏ったチャクラを回転させながら、マナと紅丸が突っ込んでいく。ひょいと軽い動作で鬼鮫がそれをかわし、鮫肌でマナを殴り飛ばした。吹っ飛んだマナが塀に頭を強打して崩れ落ちる。額から血が出ていた。
「くぅうん」
紅丸が駆け寄ってくる。どうしたらいいのか、迷っている顔だ。不意に紅は、血を流しながらもゆらりと立ち上がったサスケを目に捉えた。
「!! ――だめよ! 私達上忍でも敵わないのに……!!」
「ッ、これは……俺の、戦いだ……!」
紅の悲痛な声に、サスケが苦しそうにしながらも、それでも、そう宣言した。止めなければと慌てて立ち上がるカカシ達が一瞬にして水牢に包囲される。アスマが痛む腕を無理やり動かして風遁を発動し、水を切り裂こうとしたが、それも意味は持たなかった。
「容赦ないですねえ」
鬼鮫のつぶやきに、全員の視線がサスケを向いた。ハッとアスマが息を呑む。
イタチはサスケの目の前に立っていた。蹴りと拳を容赦なくサスケに食らわし、非情な瞳でサスケを見下ろしている。サスケは何度も血を吐きながらも全く抵抗するすべを持たず、されるがままだ。
縮まっていない。
そう思った。
あの時から、ずっと。
自分とイタチの実力さは、縮まっていなかった。
それなりに、それなりの強さをつけてきたという自覚はあったのに。あったはずなのに。
力なく地面に倒れたサスケの瞳は空ろだ。赤い血が口の端から垂れる。
そんな時、不意に煙が巻き上がった。
「自来也さま……? それに、ナルト!」
カカシが目を見開く。煙の向こうから現れたのは正に腐っても鯛、太っても猫、エロくても三忍な自来也と、金髪を煌かせる少年が立っている。
「サスケッ!!」
ナルトが走り出すのを、同じく鬼鮫が制止した。何するんだってばよ、という怒声に、これは二人の戦いですよとにたにた笑いながら言う。
「サスケ――っ」
ぐい、とイタチがサスケの服の襟を掴み、彼の体を持ち上げるなり、ばん、とうちはの家紋が描かれた塀に思い切り叩き付けた。首を掴まれたサスケが、咳き込んだ。
「お前は弱い……なぜ弱いか? ――足りないからだ」
その耳元に口を近づけ、サスケに刻み付けるように、烙印を押すように、暗示をかけるように、言う。
「憎しみが」
写輪眼の瞳が、サスケの瞳と合わさる。
空が鮮血の色を持って逆流し、サスケはその中に落下していく。真っ赤な月が血の涙を流し、そして血以外は全て色を失って黒白になった世界に、サスケはただ一人突き落とされ、そして見た。
あの夜、うちは虐殺の惨劇の夜、兄に
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