七十四 別れと出会い
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て声も出ないミズキに、ナルトは【念華微笑の術】で訊ねた。
【念華微笑の術】は山中一族の術の応用なので、相手の精神に語り掛けることが出来るからだ。
けれどミズキから返ってきたのはナルトの青い炎で焼いてほしいという懇願だけだった。
医療忍術で治癒するのを頑なに拒むミズキの望み。
そしてせめて自分の本当の顔で死にたいという願いを、ナルトは受け入れた。
「知らない誰かになり続けること…おまえは耐え切れなかったんだな」
まるで他人事のようで、それでいて己のことのような口振りで、ナルトはミズキの顔に手を翳す。
決してもう二度と戻れない月光ハヤテの相貌を、幻術でミズキの顔へ変えた。
そうして願い通り、せめて痛みがないように炎の青で包み込む。
ミズキの穏やかな顔が炎の中で眠るように燃え尽きてゆく。
全て全焼したあとには、その場にはナルトと…少し離れた場所で立ち竦むうみのイルカと。
人1人焼け死んだとは思えない静寂だけだった。
ミズキが目の前で死んだ。
あの白フードによって青い炎で焼かれたのを見ていたが、イルカはあの白フードがミズキを殺したとは思えなかった。
話し声は微塵も聞こえなかったが、ミズキが何かを頼んでいる様子が窺えたのだ。
救いを求めるようでも助けを乞うわけでもなく、むしろ死なせてほしい、と願っているかのような雰囲気を、遠目からでも感じ取れた。
だからイルカは、得体は知れないものの、あの白フードへ敵意を抱けなかった。
それよりも、この場で急に現れた存在の正体を知りたかった。
おそるおそる問いかける。
「君は…いったい…??」
波風ナルが初めて【多重影分身の術】を得た小屋。
イルカがナルにアカデミー卒業の証として額当てを手渡した思い出の場所。
そこで出会った得体の知れない白フードなのに、不思議なことに妙な懐かしさすら覚えた。
イルカの問いに、顔を見られないようにフードを目深に被り直したナルトは、口許に苦笑を湛える。
折しも、波風ナルとイルカが心を通わせた場所。
そこで、うずまきナルトとイルカはここで初めて出会いを果たす。
波風ナルと同じように、先生と生徒の関係になれたかもしれない世界。
あり得たかもしれない、けれどあり得ない過去を思い描いて、ナルトはイルカに応える。
フードの影の中でナルと同じ瞳の青を、ナルトは細めた。
誰なのか、と問うイルカに、苦笑雑じりに答えを返す。
「あなたの生徒になり損なった…出来損ないですよ」
それは寂しげで、在り得たかもしれない世界を諦めた、
そんな声音だった。
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