七十四 別れと出会い
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今は焼け爛れて月光ハヤテの容貌ですら見る影もない溶けた横顔が、次の瞬間、イルカの見慣れた相貌へ変わった。
イルカは眼を見張る。
もう二度と元の顔には戻れないと告げていた月光ハヤテの顔が、昔、アカデミーの教師として共に教鞭を振るっていたミズキの顔へ戻っていた。
それが幻術だと気づいた時には、ミズキの顔のまま、彼が炎に包まれ、全焼した瞬間だった。
「あおい…ほのお…」
青い蒼い碧い炎。
その炎の中で、本来の顔に戻ったミズキが満足げに瞼を閉ざす。
「み、ミズキ…」
イルカの瞳に、炎の青に包まれて眠るミズキの顔がいつまでも色濃く焼き付いた。
死に顔にしては嬉しそうだった。
うずまきナルトは万能ではない。
神ではない。完璧ではない。
炎上する火の中心に佇むミズキを認め、すぐに彼の頭上に水を被せた。
生き物の焼ける匂い。
焼け爛れた月光ハヤテの顔をしたミズキの身体を一目見て、ナルトは歯噛みした。
間に合わなかった。
うずまきナルトは万能ではない。
完璧ではない。神ではない。
神などと、虫唾が奔る。
けれどもこの時ばかりは、己がただの人間である事実を今更になって実感して、ナルトは唇を噛み締める。
自分の身体が不調ではなかった。だから気づけなかった。それは言い訳だ。
助けられなかった。救えなかった。間に合わなかった。
結果だけが真実で、燃え尽きたミズキの身体を抱き留め、せめて地面にそっと横たわらせるので精一杯だった。
医療忍術を施そうとするナルトの手を止めたのは、息も絶え絶えのミズキ本人だった。
月光ハヤテの正体がミズキだとバレたのは、奈良一族の森をナルトが掘り起こしたのが原因の一端でもある。
不死コンビと戦ったシカマルが生き埋めにした飛段。
彼を救う際に、ナルトが掘り返した地中。
其処に埋められていた本物の月光ハヤテの遺体をシカマルが見つけたことで、ミズキは死に追いやられている。
けれどミズキはナルトを責める気にはなれなかった。
月光ハヤテの遺体を奈良一族の森に隠したとミズキはナルトに伝えていなかった。
だからナルトは知らなかったのだ。
そんな彼を責められようか。
それに遅かれ早かれ、月光ハヤテの正体がミズキだとバレていただろう。
どちらにしても年貢の納め時だった。
それならばこうして、ナルト自身に看取られる今この時が、自分が消えるのに一番良いタイミングなのではないか。
だからミズキは最期に、ナルトの顔を間近に見られて幸福だった。
もう声はでない。
全身が燃え
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