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渦巻く滄海 紅き空 【下】
七十四 別れと出会い
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ったことではない。


「俺は足を止めちゃいけない…歩き、続けないと、」

己の命も危険も、今し方呑まれかけた意識を取り戻す。
今にも倒れそうな我が身を叱咤して、ナルトは立ち上がった。

「そうしないと、母さんに…、合わせる顔がない」



脳裏に翻る紅の髪。
眩しいくらい鮮やかな母の髪の色に励まされながら、ナルトは異変を感じた方向へ足を向けた。



「俺は──うずまきナルトなのだから」



















うみのイルカは立ち竦んでいた。
目の前で燃え続ける友を、仲間を、同僚を。
何もできずにただ、呆然と見つめていた。

突然、隠し持っていた巻物に施されていた火遁の術で、炎上したミズキ。
外見は月光ハヤテそのものだが、その正体はミズキだと発覚した相手の急な自殺に、イルカは困惑を隠せなかった。

ハッ、と我に返る。
なんとか助けようとしたが、衝撃で真っ白になった頭では思考が廻らなかった。
水遁の術が使えない我が身を恨む。アカデミーの教師でしかない己は基礎の忍術しか出来ない。



何もできない己を口惜しげに罵り、すぐに助けを求めようとしたその瞬間。

局地的な雨が降ってきた。



「み、ミズキ…」


雨、というよりはミズキの頭上にのみ、大量の水が降って湧いたように注がれたのだ。

ジュッ、と水が炎で蒸発し、真っ白な煙が立ち込める。
ぶわり、と沸き上がった白煙を掻き分けるようにして、イルカは慌ててミズキの許へ駆け寄ろうとした。


白煙の彼方で、全身が焼け爛れたミズキがぐらり、と倒れ伏せるのを見る。
急ぎ、助けようとしたイルカは、直後、眼を大きく見張った。

地面へ激突する直前、もはや焼死体も同然のミズキを誰かが抱き留めている。
そっと地面へ横たわらせている誰かは、先ほどまで此処にはいなかった第三者だった。


おそらく今し方、ミズキの頭上から水と共に降ってきた誰か。
白い羽織を翻し、焼け爛れたミズキを見下ろす誰かは、フードを目深に被っていて顔は窺えない。

得体の知れない白フードの出現で、イルカの足が止まる。
警戒心は抱いたが、けれど奇妙なことに相手へ敵意を微塵も抱けない己に、イルカ自身が戸惑った。

いくら炎が消えたからと言って、もうミズキの命は幾ばくもない。
あれだけ燃えたのだ。
大量の水で洗い流されたと言っても、生き物の焼ける異臭が鼻につく。

ミズキの肌があれだけ焼け爛れているのだ。
五代目火影の医療忍術を以ってしても、と唇を噛み締めるも、イルカはその場から動けなかった。

横たわるミズキが白フードに何やら囁いている。
何かを懇願しているようなミズキの、いや、
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