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渦巻く滄海 紅き空 【下】
七十四 別れと出会い
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は一族の氏神を祭っている神社にほど近い場所にあった。
もう二度と踏み入れたくない立ち入りたくない、あの場所。

それがこの結果だ。


再び遠のきそうになる意識を鼓舞する。
眠りに堕ち行く我が身を叱咤して、眉間に力を込めた。
ようやっと瞼を押し上げ、全身に張り付く汗を洗い流そうと印を切る。

水遁の術で頭上から雨を被ったナルトの喉が、口の中に僅かに流れ込んだ液体に歓喜で震えた。
これほど甘く美味しいものを初めて口にしたと思ったが、すぐにただの水に過ぎないと悟った。

舌に馴染む水を飲んで、ようやっと落ち着きを取り戻したナルトは、丸く滑らかな鈴を改めて握りしめる。
高度な封印術が施されている鈴を肌身離さず身に着けるべきだと考え、すぐさまイヤリングのように片耳に鈴をつけた。

いつか紫苑に返すその時まで。



そうして瞼を閉ざす。今度は意識が遠のくことは無かった。
けれども全身は重く、疲労感で今にも息が詰まりそうで、ナルトは【念華微笑の術】で再不斬に連絡をとった。




『…どうした?』

すぐに連絡がついた再不斬に、ナルトは申し訳なさげに頼んだ。


「すまないが、迎えに来てくれないか」
『場所は?』

普段余裕あるナルトのただならぬ声音から察した再不斬が、すぐに居場所を問い質す。

「木ノ葉」
『すぐ行く』


多くは語らずともナルトの求めに応じた再不斬が即座に連絡を絶った。
それきり返答が無くなった【念華微笑の術】に、ナルトは感謝の吐息をついた。

再不斬は今頃、ジャングルの奥地にひっそり佇む、隠された遺跡にいるだろう。


かつては神農率いる空忍がアジトにしていた王の都の砦。
白い霧が一面に立ち込める湖の向こう、万緑に染まる密林の奥の廃墟で、『暁』から引き抜いたサソリ・デイダラ・角都・飛段を監視していたはず。
其処から木ノ葉の里まではかなりの距離がある。
どれほど俊足の忍びでも優に半日はかかる。


それまでに体調を整えねば、とナルトは心臓部分を掻き毟った。
じわじわと、しかし着実に内側から蝕むソレに歯噛みする。身体の中から食い破られるのは時間の問題だ。
ただでさえ封じている存在があるのに、零尾である【黎明】を更に体内に宿すことで、益々タイムリミットが刻々と近づいている。

それでも今、鈴の力で一先ず危険は去った。
紫苑のおかげだな、と再度、彼女がいる鬼の国へ視線を向けたナルトは、直後、妙な胸騒ぎがして、顔を上げた。




「……ミズキ…?」

ドクドク、と心臓の音を間近に聞く。立ち上がろうとしたが、足が震えてもつれた。
膝を強かに殴って震えを無理やり押しとどめる。
身の内に巣食う存在が全身を浸食する恐怖など、今に始ま
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