罪
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荒野。
ここも、かつては採掘場だったのだろうか。打ち捨てられた重機たちを眺めながら、ハルトは歩いていた。砂利を踏む音だけが、今のハルトの音だった。
「……まだ冷えるな……」
春先でも、夜だからだろう。
静かに腕を抱きながら、ハルトは息を吐く。
「見滝原からは出られない……もうラビットハウスにも戻れない……荷物は……全部、ラビットハウスか……せめてコネクトだけでも残っていたらな」
とにかく、まずは荷物をまとめなければと考えたが、腰に手を伸ばしても、ホルダーには指輪が付けられていない。
朝、何も持たずに飛び出したまま、見滝原の山に締め出されてしまったのだ。
「いっその事、これからは見滝原の山に伝わる伝説の怪物、って触れ込みで生きるのも悪くないかな」
ハルトは自らのドラゴンの姿を思い起こしながらほほ笑んだ。
先ほど川で捕った魚を考えれば、それなりに食料については問題ないだろう。あとは、見滝原に来る前までの旅でのノウハウを活かせば、山の中で生きるのも現実的になる。
だが、そんな沈黙が長く続くはずがなかった。
ハルトの足の先に、例の銀のオーロラが現れる。
『よお、ウィザード』
オーロラから現れたのは、先ほど逃れてきた聖杯戦争の監督役。
頭と胴体の等身比率が傾いているそれは、何度見ても不気味さを
「コエムシ……」
『昼ぶりだな、ウィザード』
「ウィザード……か……」
その呼び名に、ハルトは自嘲気味にほほ笑んだ。
『あ? 何だよ』
「今の俺に……ウィザードって呼ばれる価値、ないでしょ」
『ケッ』
吐き捨てたコエムシは、興味なさそうに続ける。
『別にテメエがウィザードだろうが松菜ハルトだろうが……はたまた化け物だろうが、オレ様にはどうでもいいんだよ』
「……」
『わざわざオレ様が来た理由は分かってんだろ?』
コエムシはそう言って、その背後に銀のオーロラを出現させる。
今日一日であのオーロラを見るのは二度目か、とハルトはどこか他人事のように感じていた。
「……やれよ。俺を殺しに来たんだろ」
『何だよ、張り合いがねえな』
ハルトを見ながら、コエムシは詰まらなさそうに呟く。
『まあ、構わねえけどな……今度はしっかりと始末してやるぜ』
やがて、オーロラから新たな人物が出現した。
それは、白い初老の紳士だった。背の高く、白いスーツを見事に渋く着こなす彼は、周囲の採掘場を見渡しながら呟いた。
「……ここは?」
『おめでとう。お前は選ばれたんだ』
「選ばれた? お前……何者だ?」
紳士は白い帽子を手で抑えながら問いかける。
コエムシは体を左右に揺らしながら答えた。
『オレ様はコエムシ。
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