第一章
[2]次話
マイクロチップは命綱
イギリスマンチェスター州トラフォードでのことだ。
カーランド家の面々はその動物保護施設からの電話に仰天していた。
「えっ、マーリー!?」
「マーリーが見付かった!?」
「嘘だよね」
「ずっといなかったのに」
「いや、それがです」
施設のスタッフはカーランド家の家族にわざわざ自宅を訪問して話していた。ケイティー=ヘイズという若い女性で黒髪を後ろで束ねた丸顔で眼鏡をかけた小柄な女性だ。
「マイクロチップを確認しますと」
「マーリーでしたか」
「あの娘だったんですね」
「はい」
そうだというのだ。
「それが」
「そうなのですね」
「嘘みたいです」
「九年の間見付からなかったのに」
「あの娘はもうあの時十一歳でしたし」
「散歩中にハーネスが外れて脱走してから」
「ずっと探していても見付からなかったのに」
「それがです」
ヘイズは家族に話した。
「この度です」
「マイクロチップを確認すると」
「そうなんですね」
「マーリーだったんですね」
「はい、一度確認の為にもです」
ヘイズはさらに言った。
「施設に来て下さい」
「わかりました」
一家で頷いて答えてだった。
実際に施設に行くと。
「マーリー!」
「ニャンニャン!」
年老いた雌の黒猫が飛びついてきた、明らかにマーリーだった。
マーリーは元気だった、しかも。
「毛並みもいいし清潔だし」
「凄く健康だし」
「ずっと野良だったんじゃないんだ」
「そもそも野良で十一歳から九年生きられないし」
「実は施設の前にちょことんといたところと保護したのですが」
ヘイズは家族に話した。
「どうも九年の間です」
「他の人にですか」
「家族に迎えられていて」
「暮らしていたんですか」
「そしてその人がマイクロチップに気付いて」
マーリーのというのだ。
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