第三章
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「何かどんどん敵が増えていくって感じだな」
「そうですね」
明日夢は海に沈もうとしている夕陽を眺めながら述べた。隣には響鬼がいる。
「魔化魅だけだと思ったのにな」
「けれど戦うんですよね」
明日夢はそう響鬼に問う。
「さっき言いましたけれど」
「だから鍛えてるって言ったよな」
響鬼は笑いながら彼に述べてきた。彼も夕陽を見ている。
「その為に」
「はい。僕だって」
明日夢も言う。
「その為に今勉強していますから」
「やっぱり医者になるんだな」
今度は明日夢を見てきた。
「その決意は変わらないか」
「だって僕は」
響鬼を見て答える。
「響鬼さんの弟子だから。弟子は鬼になるだけじゃないってわかりましたから」
「ああ、その通りだ」
これはかつて二人が確かめ合ったことだ。今ここで。
「僕は医者になって響鬼を助けます」
「後ろは安全ってことか」
それを聞いて嬉しかった。言葉には出さないがそれははっきりと明日夢にもわかる。
「俺、やっぱり明日夢を弟子にしてよかったよ」
「響鬼さん・・・・・・」
「後ろからも多分来るぜ」
彼は言う。
「今だってもうすぐそこまで来てるかも知れない」
気配は感じない。しかしあえて言うのであった。
「それでも俺がいる。明日夢がいる」
「ええ」
そのことは変わらない。何があっても。
「それだけでいいな。じゃあ何処までも行くか」
「そうですね。二人いれば」
「戦っていけるさ。いいな」
「はい」
微笑んで響鬼の言葉に応える。
「それじゃあ」
「ああ、お互いの背中を守りながらな」
そしてあの挨拶をする。
「シュッ」
「シュッ」
二人は挨拶を交えた。それを終えてから夕陽の海を去る。彼等もまた運命の戦いに向かう決意を決めたのであった。そう、二人で。
「ねえ明日夢君」
それから暫くしてからのことである。学校の昼休みに持田ひとみが明日夢に声をかけてきた。
「何?」
「最近ね」
彼女は明日夢ににこりと笑って声をかけてきた。
「忙しいみたいね」
「うん、凄く」
彼はそれに答えた。
「何かすることが一杯あってね。部活にボランティアに」
「あとお医者さんになる為の勉強ね」
「うん、他にもあるし」
「あのオリエンテーションね」
「そうなんだよ」
そう答える。困った顔になっているが何処か満ち足りていて活き活きとしていた。そうした感じだった。
「そっちもあるし」
「けれどさ」
ここでひとみは言う。
「何?」
「今の明日夢君って凄く元気ね」
「そうかな」
その言葉には首を傾げて笑う。どうにも否定できなかった。
「そうだったらいいけれど」
「そうよ。だからね」
ひとみは言う。
「余計に頑張ってね」
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