第90話 カプチェランカ星系会戦 その1
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てと、レーザー水爆の四斉射分を失っている。そして撤退する敵艦隊と我々の間には、小細工で撒いたかなり肉厚な機雷原が中央から左翼方向に残存している。ここで第八艦隊司令部の指示通りに我々が追撃に移行したとして、我々はどのルートを取って敵を追撃すべきか」
機雷原の全くない右から追撃を仕掛ければ、敵中央主力部隊の砲火と機雷原に挟まれた狭い宙域を密集隊形で進むことになり敵の集中砲火を浴びることになる。まさに自殺行為だ。
機雷原のさらに左を迂回しながら追撃を仕掛ければ、今度こそ援護なしで一七〇〇対二四〇〇の真っ向勝負となる。開戦最初に比べればいくらかマシだが、補給にも増援を受けるにも距離が長くなり、戦力差がそのまま勝敗になりかねない。
機雷は自分達で敷設したものなので敵味方識別装置も有しているから、機雷原をそのまま乗り越えていくという方法もある。だがいくら敵味方識別装置が付いているとは言っても物理的な障害物には違いない。部隊としての機動性を大きく損ねながら前進するというのは、防御する側の敵にとって格好の的となる。
部隊を二つに分け機雷原を上下から迂回するという手もあるが、それは最悪の手だ。敵右翼部隊は上下どちらかの部隊へ急進するだろう。八五〇対二四〇〇ならば、四時間かからずに壊滅して敵にまったく損害を与えることができず、敵右翼部隊の我が軍左翼進攻を招くことになる。アルテナ星域におけるミッターマイヤーの恩師への『お礼参り』の通りだ。残りの八五〇隻がどう動こうと、艦隊戦闘においてもはや何の意味もない。
「故にここは我々が積極的に動く必要がない。敵右翼部隊に次の行動を躊躇させるだけの打撃は与えた。それでも数的不利な我々は現在位置で待機し、後退した敵右翼部隊の動きを観察しつつ、状況によっては第八艦隊の増援を行えるよう準備を整えておくのが、まず基本だろうね」
そんな基本すら理解せず、戦果拡大を目的として追撃指示するような第八艦隊司令部は、本当にこの戦いに勝ちたいのか。全体としても数的不利なのは変わりがないわけなのだから、第一〇艦隊が到着する一六八時間をどうやって損害を少なく消費するかを、戦局の変化を見極めつつ冷静に判断してから指示しろと言いたい。
シトレ自身がこの命令を下したとすれば、艦隊指揮官としてはあまりいい部類ではないと判断せざるを得ない。だがこれまでの経験からとてもそうは思えないので、恐らくは参謀長か副参謀長かが威力偵察の意味を含めて提案したというところだろうか。それでもOKを出したのはシトレということだが……
「後退した右翼部隊に対して急進近接並行追撃を仕掛けるというのは難しかったのでしょうか?」
頷きながら俺の話を聞いていたブライトウェル嬢からの問いに、爺様以外の幹部の視線が俺に集中する。さっきまで怒気
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