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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第90話 カプチェランカ星系会戦 その1
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とした攻撃計画を練っていて、第四四高速機動集団の脆そうな陣形を見て、容易に喰い破れると考えていたのだろう。あまりにもあっさりと引っ掛かってくれて、基本構想を組んだ俺としては冗談じゃないかと思えてくる。

 それに爺様やプロウライト准将、何よりバンフィ准将と第三部隊の奮闘と分単位での戦闘指揮は見事だった。特に散開陣形から密集陣形へ変更する際に生じる火力バランスの変化を、実に滑らかに統制していた。火力統制に艦隊戦闘の重きを置く爺様にとっては、もはや欠くべからざる人材だ。

 最初に砲火を開いてから六時間。敵右翼部隊は先頭集団を殆ど廃棄していく勢いで後退していく。メインスクリーンに映る敵の光点も時間を追うごとに少なくなっていくのが目に見えてわかる。爺様は追撃をせず再び各部隊へ、方形陣への再編と補給及び応急修理を命じた。そのタイミングだった。

「司令官閣下」
 副官席にある司令部直通の超光速通信画面を弄っていたファイフェルが、不愉快と困惑を綯交ぜにした表情を浮かべながら、司令官席でブライトウェル嬢が淹れたばかりの珈琲を傾ける爺様に告げた。
「第八艦隊司令部より通信。『第四四高速機動集団は速やかに前進し、敵右翼部隊を殲滅せよ』とのことです」

 それは一瞬だった。爺様と珈琲を持ってきたブライトウェル嬢を囲むように立っていた第四四高速機動集団の司令幹部の、緊張しつつも一息入れる穏やか空気が、まるで極地のような寒気と暴風雪へと変化した。またもついていけてないブライトウェル嬢は、その包囲下で困惑し……何時ぞやと同じように俺の方へ戸惑う子犬のような視線を向ける。まぁ何も言わずに紙コップを司令官用デスクに置く爺様や、顔の部位に変化はないのに米神の血管だけが浮き上がっている参謀長、一気に飲み干して紙コップを握りつぶし眉間に皺を寄せたモンティージャ中佐、コップを平衡に保ちながらも大声で四文字F語を吐き捨てるカステル中佐に、彼女が問いかけられるわけがないのだが。

「多少小細工をしたとは言え、未だに我々は敵右翼部隊に対して数的不利だ。カステル中佐?」
 答える俺からの視線に、口をへの字にしながらもカステル中佐は、左手だけで器用に携帯端末を操作しながら言った。
「簡易集計だけで一〇九隻撃沈、九三隻大破戦闘不能。中破を除いてまともに戦えるのは一七〇〇隻以下だ」
「敵の残存兵力はどのくらいです? モンティージャ中佐」
「重力波探知で観測しただけだが、動けるのはまだ二四〇〇隻以上いる」
 モンティージャ中佐はそう言うと大きく鼻息を吐くことで怒りを抑えようとしている。爺様とモンシャルマン参謀長は何も言わずに珈琲を啜っているし、ファイフェルも興味深しげにこちらを見ているので、俺はブライトウェル嬢に話を続ける。
「さて、ブライトウェル兵長。我々は持てる機雷の全
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