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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第90話 カプチェランカ星系会戦 その1
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受けることなく第四四高速機動集団の左半分、正確には中央から左翼にかけて天頂方向から見ると三角柱のような機雷原を構築することに成功する。そして敵右翼部隊は横隊陣のまま、機雷原にまともに突っ込んだ。

 敵右翼部隊の右翼にかなりの数の光点が現れ、左右の戦列にズレが現れる。前方に妨害の無い左翼は通常速度で前進し、右翼は機雷を掃射しながらゆっくりと前進するから、陣形は自然と機雷原と点対象のような三角形に変化していく。いわゆる左斜陣形だ。

 それに対して第四四高速機動集団は『前進』を開始する。ただし第一(中央・ビュコック)と第二(左翼・プロウライト)は散開陣形のまま、第三(右翼・バンフィ)はゆっくりと密集陣形に変化させつつだ。。機雷原の妨害のない敵部隊の左翼先頭、つまり楔型の先端に向けてバンフィ准将は火力を集中させ出鼻を挫く。一方で機雷原にぶつかった敵部隊の中央と右翼に対し、爺様とプロウライト准将は低出力投射で残りの半分の機雷を六時の方向にバラまきつつ個別に目標を指示して敵艦の各個撃破を目論む。

 しかし根本的に数的に不利な状況に変わりはない。最初に作られた機雷原も機動集団から見て中央部は薄く左翼が厚いのだから、敵の中央部隊は早々に掃射を終えて機雷原を乗り越えてくる。その火力は正面で粘っているバンフィ准将の第三部隊へと浴びせられる。右翼が機雷原の突破に手間取っているとはいえ、敵部隊の中央と左翼を合わせれば二〇〇〇隻を超す。七〇〇隻程度の第三部隊はたまらず全速で『後進』する。

 左翼を切先として機雷原の突破に成功した敵右翼部隊は、左斜陣形のまま第三部隊を追撃し、そのまま元の高速機動集団と第八艦隊の境界面へとなだれ込んでいく。この時点で第八艦隊司令部から第四四高速機動集団司令部に後退して密集陣形に再編せよとの指示が飛ぶが、爺様は意図的にそれを無視した。故に敵右翼部隊はさらに前進し、第八艦隊左翼に位置する第四部隊の左側面へと入り込んで、突破して第八艦隊の後背に回り込んでの半包囲しようとするが……包囲網に引きずり込まれたのは彼らの方だった。

 第八艦隊第四部隊は速度に合わせて左舷回頭。左脇腹を晒している敵右翼部隊を強かに叩きのめす。悶える隙にバンフィ准将は後進を止め、円錐陣を構成し再度前進を開始。そして爺様の第一部隊は前進しつつ上から、プロウライト准将の第二部隊は後進しつつ下から、後で構築した機雷原を迂回し、上下から敵部隊を挟撃する。これで『第八艦隊第四部隊を底にした』縦の逆レの字に近いU字陣形(正面に第三部隊と機雷原があるので正確には四角錐)による半包囲が完成した。

「敵の指揮官は勇猛だが、いまいち視野が狭いな」

 一方的になりつつある戦局を見つめながら、モンシャルマン参謀長は肩を竦めて呟いた。こちらの予想通り、最初から右翼部隊を主軸
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