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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第90話 カプチェランカ星系会戦 その1
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視野でわかる。

「第八艦隊司令部からは当面戦線を維持することを指示されているが、交互砲撃一巡目で直衛艦に被害が出るほどの火力差だ。少し手を入れないと些か困ったことになりかねない」
「増援の要請は難しいでしょうか?」

 参謀長に問いかける俺自身、それは無理だと分かっている。正面にほぼ同数の敵戦力を抱えている以上、開戦早々の予備戦力前線投入は、以降の戦況を考えてもあり得ない話だ。参謀長も俺がそれを分かって問いかけていると理解しているので、口では応えず僅かに頭を右に傾けた仕草で応じる。故に俺も小さく肩を竦めるだけで応えた。

「敵の戦闘能力が当集団と同程度という事であれば、砲撃参加面積が同じなら当然、隻数が密度差になります。そこを崩すとしたら、散開陣形にして面積を広くとるしかありません」
「陣形の不用意な拡大は、敵に突破の機会を与えるようなものでしかない。我々が突破されれば、第八艦隊は帳面左翼の二方向から挟撃されることになる」
「敵右翼部隊の行動は実に慎重です。一気呵成に攻勢に出てもなんらおかしくないだけの戦力差があるのに、腰を据えて砲撃戦にのみ集中しています」

 原作でヴァルテンベルクの性格は特に記載されていなかった。イゼルローン駐留艦隊司令官として艦隊を指揮し四倍の同盟軍と戦って、要塞があるとはいえ一撃で粉砕されたわけではないのだから、貴族ではあっても無能な指揮官ではないし、怯懦な性格をしているとも思えない。

 もし俺が帝国軍全体の指揮官であるならば、両翼いずれかを前進させ半包囲するというプランで、それぞれの部隊を動かす。右翼のヴァルテンベルクか、左翼のメルカッツか。俺であればヴァルテンベルクを急進させて第四四高速機動集団を撃砕し、同盟軍全体が左に傾いたタイミングで中央と左翼を前進させる。メルカッツは近接戦闘指揮において絶対的な強さある以上、ヴァルテンベルクを槌、メルカッツを金床としたほうが有効だ。作戦時間も短くて済むし、カプチェランカの地上で絶望的な状況下で戦う陸戦部隊の助けになるし、イゼルローン要塞を空白にする時間も減る。

 であるならば、この腰を据えたヴァルテンベルクの動きは、突撃前に第四四高速機動集団の抵抗力を減衰させる準備砲撃のようなものと考えられる。勿論、帝国軍の司令部が全く別の作戦を考案している可能性はあるだろうが、ただ漫然と同盟軍が損耗して撤退するまでこのまま砲撃を続けるというのは、時間とエネルギーの浪費であることは帝国軍首脳部も理解している、はずだ。

 ここまで簡単にモンシャルマン参謀長に俺の考えを伝えると、参謀長も賛同するように小さく何度か頷く。

「突撃前の準備砲撃とすれば、こちらが付き合って撃ち減らされる意味はない。閣下、いかがでしょうか?」

 モンシャルマン参謀長の問いかけに、爺
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