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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第90話 カプチェランカ星系会戦 その1
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「正面の敵右翼部隊までの距離、八・七光秒。機動集団基準有効射程まで約一〇分」
「敵右翼部隊は単一台形陣を形成。敵中央部隊とほぼ並行して移動中」
「敵右翼部隊の総数は三六〇〇隻ないし三七〇〇隻。戦艦三五〇ないし三七〇、巡航艦一六〇〇ないし一七〇〇、駆逐艦約一二〇〇、宇宙母艦一五。台形陣後方に補助艦艇らしきもの四〇〇」

 編成を見る限りメルカッツの重装部隊ほどではないにしても、やはり制式艦隊の中核戦力そのもの。各部隊・各戦隊の戦列もアトラハシーズ星系でのメルカッツ直轄艦隊ほどではないにしても、まずは一線級の部隊であると言えるだけ整っているから、急ごしらえの連合部隊とは思えない。

「敵右翼部隊中央部に識別可能な戦艦を確認……戦艦オスターホーフェン。マルセル=フォン=ヴァルテンベルク中将の乗艦と思われます」

 ヴァルテンベルク……イゼルローン要塞駐留艦隊司令官で、第五次イゼルローン攻防戦において巻き添え砲撃を受けた指揮官だ。あの時は確か『大将』だったはずだが、今はまだ中将なのか? イゼルローン要塞における帝国軍指揮官の赴任期間は平均で三年と考えれば……中将で赴任して、大将に現地昇進と考えるのは些か無理があるので、昇進情報が連絡として遅れたのか。それともただ単にイゼルローンに赴任してきたタイミングという事か。

 そうだとして、敵の中央部隊にはアトラハシーズ星系で遭遇したローラント=アイヒス=フォン=バウムガルテン中将の艦隊もいることから、イゼルローン駐留機動艦隊と思われる。となれば、イゼルローン駐留艦隊の規模が一万八〇〇〇隻を超えることになる。結論としては……

「イゼルローンに交代赴任する予定であったヴァルテンベルク艦隊は、ダゴン星域への同盟軍の侵犯により、急遽そのまま戦列に加えられた、といったところか」
「それが一番矛盾しない結論だろうな」
 口に出た空想に、隣に座っていたモンティージャ中佐も同意してくる。
「交代戦力となれば、時期さえ間違わなければ取り立ててフェザーンの駐在武官達もそれほど警戒はしないだろう……そうか、君も経験者だったな」
「あとは昨年のイゼルローン攻防戦の損失補填と重なった可能性ですね」
「メルカッツが最前線の星域防衛に駆り出されていたということは、イゼルローンでの部隊補充と訓練が終わるまで、重戦力で前線を維持して欲しいという意図か。そこにどこからか同盟軍の辺境部攻略作戦情報が帝国側に流れた」
「……アトラハシーズ星系での戦い、事前に情報が漏れていたとお考えですか?」
「まず間違いない。軍外組織からフェザーン経由だな。アスターテかダゴンかはっきりとわからないので、やや大きめの戦力をメルカッツに預けた、というところだろう。証拠はないがね」

 珍しく表情に出して悪態をつくモンティージャ中佐
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