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フィルウさんの部屋から立ち去ろうとすると、後ろでバン!と大きな音がなった後に、背中に強い衝撃。タックルされた!?なんで!?と慌てたが、落ち着いて確認してみると、琴葉さんが抱きついていた。
「ハ、ク、ネ、ちゃーん!!!!」
「こ、琴葉さん!苦しいです…!」
黒い髪を深紅の上品なリボンで結って、一風変わった服を着ているこの人が琴葉さん。
初めて会った時から、理由はわからないけど距離感がおかしい人で、時々こうやって抱きつかれて少し苦しい思いをしている。
「離してやれ、琴葉」
「いいじゃん別にい。ねー、ハクネちゃん?」
「え、えっと…」
フィルウさんが声をかけてくれるが、すぐ後ろで満面の笑みを浮かべている琴葉さんを見ると、きっぱり「やめてください」と言うのも躊躇われて…私は曖昧な返事しかできなかった。フィルウさんはどうにも不満そうな表情を浮かべた。
「フィルくん、そんなに心配してどうしたいのー?別に何もしないけど」
「…君が、何もしないわけがないと思うんだけど」
…二人の視線の間に火花が散っているのが見える気がする。というか、そもそもなんでこの二人は私を巡ってここまで争っているんだろう。何かしてしまったのだろうか…?
その瞬間だった。急に私の背中に密着している琴葉さんの体が熱を持ち出し、パチンと音がした時には琴葉さんの手には一振りの刀が握られていた。それはゆっくりとフィルウさんに向けられて…
「そんなに心配されるのはちょこっと不快だからさ。君、近づいたら斬るよ」
ひえ。
「あ、ハクネちゃんは絶対に傷つけないから安心して?」
…今まさに人に刀を向けてる人に言われましても。
その言葉をグッと飲み込んで、一つ深呼吸をする。驚いたが、琴葉さんは「悪戯」とか「意地悪」と言ってこうやってふざけることがある。危害を加えるつもりは本当にないことを知っているから、大丈夫。
フィルウさんは眉間に手を当てて少し考えるような素振りを見せた後、小さくため息を吐いてから言った。
「わかったから、とりあえずその刀をしまってほしいな。その刀はそんなにぽんぽん使うものじゃないんだって」
「わかってるけど、ハクネちゃんをどーしてもモフりたくてさ。ごめんごめん」
…ん?
「琴葉さん、いつもこうやって抱きついてくるのは…!?」
「もふもふしたいのよー!ハクネちゃんの髪、大好きなの!今日も触っていい?」
「い、いいですけど…大した手触りじゃ…」
わはー!と嬉しそうに声をあげながら私の髪を優しく撫でる琴葉さん。一つ、この人の謎が解けた。
「それに、ハクネちゃん体温低い方でしょ?私、この通りめちゃくちゃ体温高いから、気持ちいいのだよねえ」
まさかの冷房代わり!?
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