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ドーナツ奉行
第三章
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「食べるんだよ」
「そうですか」
「肘をつかないで片手に持つ」
「そうして食べるものですか」
「うん、そうして楽しく食べよう」
 穏やかな笑顔で言ってだった。
 篠田は今度はドーナツの蘊蓄を話しながら食べていった、彼の部下達はその話を聞きながらドーナツを食べておやつの時間を過ごした。
 それから仕事に戻ったが仕事が終わった時に話した。
「いや、ボスがな」
「まさか食べる時にあれこれ言うなんてな」
「飲むお茶がどうとか」
「最初に食べるものは何か」
「食べ方までな」
「それで士気って」
「蘊蓄まで言って、あれじゃあ」
 ここで若い青い目の社員が言った。
「お奉行だな」
「ああ、日本の昔のお役人か」
「長官みたいなものだな」
「昔の日本でいったら」
「それか、ボスは」
「それになるんだな」
「日本じゃ鍋料理もあって」
 その社員は同僚達に話した。
「皆で食べるけれどそれを仕切る人がいて」
「ああ、それか」
「うちのボスはそれか」
「要するに」
「そうした人を日本じゃ鍋奉行って言うけれどな」
 この言葉も出して話すのだった。
「うちのボスはな」
「言うならドーナツ奉行か」
「それになるんだな」
「うちのボスは」
「あれだけあれこれ言って仕切るとな」
 それならというのだ。
「それだよ」
「そうなんだな」
「成程な」
「ボスにはそうした一面があるんだな」
「ドーナツ奉行なところも」
「そうだろうな、日本人だけにな」
 こう言うのだった、そして彼等は後にかつて篠田の部下だった彼等とは違う部署の課長の一人にこう言われた。
「あの人皆で食べたら仕切るんだよ」
「そうなんですか」
「ドーナツの時だけでなく」
「お奉行なんですね」
「そうなるんですね」
「お鍋の時は鍋奉行になるんだよ」
 実際にというのだ。
「それで他のお料理もだよ」
「そうするんですね」
「仕切るんですね」
「そうするんですね」
「そうだよ、こっちでもそれは変わらないんだな」
 課長は彼等のドーナツの話を聞いたうえでこうも言った。
「穏やかで優しくていい人でもな」
「そうした一面あるんですね」
「食べる時は仕切る」
「そうした人なんですね」
 篠田の部下達も頷いた、そしてだった。
 以後篠田のことをドーナツ奉行と仇名することになった、そして彼と一緒に食べる時はその仕切りを受けたが。
「これだよな」
「ボスはこれがあるんだよな」
「皆で食べたら」
 心の中で微笑みながら言った、確かに仕切りは受けるが。
 彼はその時も穏やかで優しい感じでまたあっさりしていたので文句はなかった、そして彼の下で働き一緒に食べるのだった。


ドーナツ奉行   完


           
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