第一章
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ユリウス=カエサルの選択
この時ユリウス=カエサルは迷っていた。
何故迷っているか、それは彼にとって人生の分かれ目になる様なことだったからだ。
考え考え抜いた、それでも結論が出ず周りにも言った。
「どうすべきか」
「今はですね」
「それが問題だ」
その長身で色白で知的だが評判になっている頭が目立つ外見で言うのだった。
「まことにな」
「カエサル様にとっては」
「うむ、選択次第でだ」
それによってというのだ。
「私の運命が決まる」
「そうしたものですね」
「だからこそだ」
周りの者に言うのだった。
「私は今真剣にだ」
「お考えになられ」
「悩んでいる、どうしたものか」
腕を組みしきりにぐるぐると歩きながら言った。
「一体」
「あの、迷いはです」
ここで逞しい身体の中背で濃い茶色の鳥の巣の様な髪の毛と明るい顔立ちの男が言ってきた。彼の腹心の一人アントニウスである。
「カエサル様はいつも言われていますね」
「禁物、だな」
「はい、今カエサル様は」
「見ての通りだ」
カエサルはアンドニウスに顔を向けて答えた。
「私は悩んでいる」
「左様ですね」
「その忌むべきだ」
「迷いにですね」
「入っている、考え悩みな」
そうなっていてというのだ。
「迷っている」
「そしてそれは」
「今言った通りだ」
まさにというのだ。
「忌むべきことだ」
「左様ですね」
「こうした状況は一刻も早く終わらせないとならない」
「絶対に」
「即断即決でないとだ」
さもないと、というのだ。
「政治の場でも戦の場でもな」
「後れを取りますね」
「古来英雄は迷わなかった」
カエサルは自分が読んできた書から得た知識も出した。
「そしてスッラもな」
「そうでしたね」
「彼は迷いませんでした」
「常に冷静であり」
「そして即座に決断しました」
「そのうえで動いた、なら私もだ」
カエサルは自身が若い頃にローマを支配し彼を脅かしもしたその人物のことも思い出しつつ述べた。
「そうする訳にはいかない」
「ではどうされますか」
「この度は」
「一体」
「こうする」
こう言ってだ、カエサルは。
賽子を出した、そうして言った。
「今から投げて転がしてだ」
「出た目で、ですか」
「決められますか」
「そうされますか」
「そうする、これよりな」
懐から出した賽子を手に周りに話した。
「決める、偶数か奇数でな」
「わかりました、ではです」
「今よりそれを投げられて下さい」
「賽子を」
「そうされて下さい」
「その様にする」
周りに真剣な顔で答えた、そうしてだった。
カエサルは賽子を投げた、その時言った。
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